米シカゴに生まれ、教会でゴスペルを歌って育ったカーティス・メイフィールドは、1958年にコーラス・グループ、ジ・インプレッションズのメンバーとしてデビューした。
そのインプレッションズで彼が書いて大ヒットした曲が、当時の公民権運動を背景にしたゴスペル・ソウルの名曲「ピープル・ゲット・レディ」だった。
1970年にインプレッションズを脱退後はソロで活動し、5年のあいだに8枚ものアルバムをリリースし、独創的な音楽を量産した。当時はマーヴィン・ゲイ、スティーヴィー・ワンダーと並び、〈ニュー・ソウル〉の代表格として評価された。
わたしは30代前半の頃にロックから離れてソウル・R&Bばかり聴いていた時期があったのだけれども、このカーティス・メイフィールドはそのときにかなりハマったアーティストだった。
その真摯で誠実な孤高の音楽は、ときには攻撃的だったり、ときには不穏な表情や疑い深い表情も見せるけれども、根底には人類愛を確信しているような、優しく美しいメロディと情感が通奏している印象だった。彼の音楽とそのアティテュードは、ボブ・マーリィやプリンスにも影響を与えたと言われる。
わたしも一聴して好きになったぐらいで、カーティス・メイフィールドはロック好きにも相性がいいと思う。
R&Bとファンクの中間ぐらいの独創的なサウンドは、そのビート感やアグレッシヴなアレンジも含めて、ロック好きが魅かれる〈カッコ良さ〉に溢れている。
以下はわたしがお薦めする、最初に聴くべきカーティス・メイフィールドの至極の名曲5選です。
People Get Ready(1965)
インプレッションズ時代のゴスペル・ソウルの代表曲で、カーティス・メイフィールドが書き、リード・ヴォーカルも彼だ。
1960年代の公民権運動(人種差別に反対する運動)を背景に書かれたこの感動的な名曲は、その後ゴスペルのスタンダードとして各地の教会でも歌われるようになったという。
(Don’t Worry) If There’s a Hell Below, We’re All Going to Go(1970)
ソロ第1作目のアルバム『カーティス(Curtis)』のオープニングを飾る曲。全米29位のヒットとなった。
わたしはこの1曲を聴いた瞬間からカーティス・メイフィールドにハマったのだった。カッコ良さだけでなく、不穏な空気と本気の覚悟のようなものを感じる。強烈なインパクトだった。
Move On Up(1970)
1st『カーティス』からのシングルで、イギリスでは12位と最大のヒットなった。
後にザ・ジャムがカバーしたり、映画に使われたりもして、たぶんカーティス・メイフィールドの曲では最も広く知られている曲だろう。
日本でも日テレの番組『ナイナイサイズ』で使用されていた。
あと、さっきたまたま点けっぱなしにしていたテレビから突然このイントロが流れてきてびっくりしたのだけれども、なんの番組かと思ったら『ビートたけしのTVタックル』だった。
Little Child Runnin’ Wild(1972)
1972年のブラック・ムービー『スーパーフライ』のサウンドトラックとして制作されながら、複数のヒット曲を生み、カーティス・メイフィールドの代表作となった名盤『スーパーフライ』のオープニング・トラック。キレッキレのアレンジ、タイトな演奏にシビれる。
Freddie’s Dead
『スーパーフライ』からカットされたシングルで、全米4位と、彼にとって最高位のヒット曲となった。
アルバム全体を通じて素晴らしいアレンジとタイトな演奏が悶絶するぐらいカッコいいが、この曲もまたストリングスのアレンジが格別な名曲だ。
カーティス・メイフィールドのアルバムを最初に聴くなら、何はともあれ『スーパーフライ』をお薦めするが、入門用の『ベリー・ベスト・オブ・カーティス・メイフィールド』もいい。ここで選んだ5曲はもちろん、最初に聴くべき代表曲はすべて網羅されています。
(Goro)