アニマルズは1964年にデビューしたイギリスのバンドだ。
アメリカのブルース・R&Bに英国流のポップな解釈を加えたブリティッシュ・ビート・バンドのひとつで、一般的にはビートルズ、ストーンズ、ザ・フー、キンクスに次ぐ、5番手ぐらいの認知度のバンドだろう。
まあ大抵は「4大ブリティッシュ・ビート・バンド」などという言い方で括られ、アニマルズは落選してしまうのが常だけれども。
しかし当時の英国のブルース・R&Bブームにおいて、白人の若いヴォーカリストたちが「いかに黒人のように歌うか」を競い合う中で、このアニマルズのヴォーカリスト、エリック・バードンは群を抜いていた。黒人のように歌える白人ということでは、彼はミック・ジャガー以上だった。
アニマルズの活動のピークは初期の1964年~65年であり、ブルース・R&Bのカバーは他の追随を許さないほど素晴らしかったが、66年以降、時代がオリジナル曲を求めるようになると、ソングライターのいないアニマルズは俄然不利な状況となった。外部のソングライターに依頼してかろうじて数曲のヒットは生んだものの、徐々に強力なオリジナリティを発揮していった4大バンドに水を開けられるようになっていく。
米サンフランシスコに拠点を移し、当地で流行のサイケデリック・ミュージックなどの要素も加えて活動したが、大きな成功には至らず、1969年に解散した。
ここでは彼らの全盛期、1964~65年の英EMI時代の代表曲からお薦めする、最初に聴くべきアニマルズの至極の名曲5選です。
The House of the Rising Sun
女郎屋で生きてきた女性がその半生を振り返る暗い情念に満ちた曲で、作者不詳の米国の伝承曲。
ウッディ・ガスリーやレッドベリー、ジョーン・バエズ、そしてボブ・ディランなどによってそれまでフォーク・ソングとして歌い継がれてきたが、アニマルズはR&B風にアレンジして2ndシングルとして発表、全英1位、全米1位と、彼らにとって最大のヒット曲となった。
当時23歳のエリック・バードンのもの凄い迫力のヴォーカルに、キーボードを中心にした渋いアレンジが、情念がゆらめく波のように盛り上げる、一度聴いたら忘れられない名曲だ。
Don’t Let Me Be Misunderstood
1960年代に多くのヒット・ソングを生みヒットチャートを支配した、ニューヨークのブリル・ビルディング(音楽業界のオフィスやスタジオが集まるビル)の職業ソングライターたちによって書かれた曲で、先にニーナ・シモンが録音したが、アニマルズはそれよりテンポを速めたR&B風バージョンにアレンジし、大ヒットさせた。全英3位、全米15位。
翌年の1965年には尾藤イサオが「だーれのせいでもありゃしないー、みんな、オイラが悪いのか」と日本語で歌って大ヒットしたため、昭和の日本人ならみんな知ってた曲だ。
It’s My Life
この曲もブリル・ビルディングの生まれで、全英7位、全米23位。
彼らには自作の曲ももちろんあったのだけど、それらがヒットにつながらなかったのが彼らの限界だったのかもしれない。
この曲はベースとギターのリフが一度聴いたら忘れられない曲だ。動画の、壁から美女たちが首だけ出している謎の演出も忘れ難い。
We Gotta Get Out of This Place
「おれたちはこんなところに居るべきじゃない。おれたちにはもっと良い未来、別の人生があるはずだ。おれはここから出て行くぞ!」と歌う歌だ。全英2位、全米13位の大ヒットとなった。
当時のベトナムで戦っていた米軍兵士たちに最も人気があった曲だったそうで、ブルース・スプリングスティーンが「おれの歌のすべての原点がこの曲にある」とも語った名曲だ。
Bring It On Home to Me
アニマルズはブルースやR&Bの名曲のカバーに素晴らしいものが多いが、中でもわたしが特に好きだったのがこのサム・クックの1962年のヒット曲のカバーだ。全英7位、全米32位のヒットとなった。
あのサム・クックの名曲中の名曲なので、ちょっとやそっとの出来では満足できないところだけれども、このカバーは素晴らしい。サム・クックよりはライトな味わいでも、ちゃんとスパイスの効いた深い味もする。キーボードを中心にしたアレンジがまたいい。
入門用にアニマルズのアルバムを最初に聴くなら、『ベスト・オブ・アニマルズ』がお薦め。最初に聴くべき代表曲はすべて網羅されています。
(by goro)