ティーンエイジ・ファンクラブ(以下TFC)は、1990年に同郷の先輩、パステルズのレーベルからインディ・デビューした、スコットランドのグラスゴー出身のバンドだ。
91年に2nd『バンドワゴネスク』でメジャー・デビューすると、当時の英米同時多発ロック革命の一躍中心に躍り出てブレイクした。
彼らの音楽からは、同郷の先輩パステルズやヴァセリンズなどをルーツに、60年代のザ・バーズやニール・ヤング、パワー・ポップ系のビッグ・スターやバッドフィンガー、そして同世代のダイナソーJr.やニルヴァーナなどの影響なども感じられる。
ロックスターらしい華がまったくなく、ロック・オタクみたいなリスナー丸出しの雰囲気で、カッコつけたりトガって見せたりすることもなく、ただ純粋にギターを思いっきりかき鳴らすのが楽しくてたまらないだけの近所の優しいお兄ちゃんたちのバンドみたいなキャラクターが当時は新鮮だった。
ギターのノーマンとベースのジェラードという2人の才能あるソングライターがいるのが強みで、さらに残りの2人もたまに曲を書く(書いた本人がリード・ヴォーカルを取る、ビートルズ方式だ)。泣きメロとキャッチーなコーラスとラウドなギターが特徴の、一度聴いただけで口づさめるような名曲を量産した。
90年代前半のオルタナ・ブームの当時、わたしにとって、最も好きなイギリスのバンドのひとつだった。「カッコいい」とは思ったことが無いけれど、なぜか偏愛してしまうバンドだった。
2018年、代表曲も多く書いたベースのジェラードが意見の相違(今さら!)で脱退してしまったのが少し心配だけれど、現在もバンドは活動を続けている。
以下は、わたしが愛するティーンエイジ・ファンクラブの至極の名曲ベストテンです。
Hang On
93年のアルバム『サーティーン(Thirteen)』のオープニング・ナンバー。ジェラードの作。
いきなりT・レックスの「20センチュリー・ボーイ」をパクったようなイントロにテンションが上がるが、たぶんちょっとしたユーモアなのだろう。
ノイジーなサウンドと優しい歌メロのアンバランスがTFCらしくて、楽しい。
Mellow Doubt
4thアルバム『グラン・プリ(Grand Prix)』からの、ノーマン作のシングルで、全英34位。
アコースティック・サウンドが美しい、地味ながら心に響く名曲で、TFCの新境地を開いた。
Ain’t That Enough
『ソングス・フロム・ノーザン・ブリテン』からの、ジェラード作のシングルで、全英17位とTFCにとって最高位のシングル・チャート順位となった。
美しいコーラスと柔らかいフォーク・ロック風のサウンドが印象的な、とにかくもう、ほぼバーズである。
Neil Jung
『グラン・プリ(Grand Prix)』からのノーマン作のシングルで、全英62位。
彼らはアルバム制作中の仮タイトルがそのまま、正式タイトルになってしまうことがよくあるので、これもたぶん「ニール・ヤングっぽい曲」ぐらいの意味だったのだろうと思う。
サビでマイナーになるところがノーマンの、脱臼型くせソングライティングの真骨頂。
Planets
5thアルバム『ソングス・フロム・ノーザン・ブリテン(Songs from Northern Britain)』収録。ノーマンの作で、フォーク・ロック風の美しい曲だ。
アルバム全体的に、それまでのラウドなギターは抑えられて、聴きやすくバランスの良いサウンドになり、コーラスの腕を上げ、完成度の高いアルバムになった。TFCにとって最も売れたアルバムである。
Sparky’s Dream
アルバム『グランプリ』収録の、ジェラード作のリード・シングル。全英40位。
TFCの中でも最も甘く、最も人気の高い代表曲のひとつ。ジェラードの可愛らしい声がよく合ってる。
Norman 3
3rd『サーティーン』からのシングルで、全英50位。
制作中に「ノーマンの3曲目」という意味で付けられた仮タイトルがそのまま正式タイトルになっている。
出だしから、いかにもノーマンらしい、フックのあるメロディ。その後、永遠に終わらないんじゃないかと思うようなサビが、延々と11回もリフレインされる。
Everything Flows
インディーズから発表した1st『カソリック・エデュケイション(A Catholic Education)』収録曲で、TFCのデビュー・シングルでもある。ノーマンの作だ。
この肩の力の抜けた感じと低いキー、速過ぎないフォーク・ロック風のテンポ、初めてギターを手にした少年が嬉しすぎて延々とストロークでかき鳴らしてるような高揚感、そんな非プロフェッショナルな感じが当時は新鮮で、凄く良かった。こればっかり中毒みたいに聴いていた頃もあった。
現在のライヴでも必ず最後に演奏されている、TFCの代表曲だ。
Star Sign
ジェラード作で、メジャー・デビュー・シングルとして発表された。全英44位。
TFCのブレイク作で、わたしも彼らをこのシングルで知って好きになったのだった。
若さ溢れる疾走感、ラフでラウドなギター、甘酸っぱい青春の思い出が蘇るような歌メロ、90年代ロックの幕開けを告げた英国製ロックンロールだった。
The Concept
名盤『バンドワゴネスク(Bandwagonesque)』のオープニングを飾る、ノーマン作の名曲。全英51位。
歌詞に「オー、イエー」が多すぎるのはユーモアのつもりだと思うけど、それでも心を揺さぶる圧倒的な泣きメロが素晴らしい。TFCの代表曲となった名曲だ。
入門用にティーンエイジ・ファンクラブのアルバムを最初に聴くなら、ベスト・アルバム『ヒット大全集(Four Thousand Seven Hundred and Sixty-Six Seconds – A Short Cut to Teenage Fanclub)』がお薦めだ。最初に聴くべき代表曲はほぼ網羅されている。
以上、ティーンエイジ・ファンクラブ【名曲ベストテン】でした。
(by goro)