The Temptations
Papa Was a Rollin’ Stone (1972)
60年代にモータウン・レコードの看板グループとしてヒット曲を連発したテンプスだったが、70年代はその音楽スタイルをさまざまに変化させ、音楽の幅を広げていった。
時代と共に、ロック、サイケデリック、ニュー・ソウル、ファンク、ディスコと、めまぐるしく音楽の流行が変化すれば、それらを貪欲に取り入れ、様々なスタイルのアルバムやヒット曲を残した。彼らの音楽性の変化はそのまま時代の変化を見ているようで実に興味深いものがある。
この「パパ・ワズ・ア・ローリング・ストーン」は、「マイ・ガール」の頃のスタイルとはテーマもサウンドもガラリと変わった、社会派系ニュー・ソウルの影響がみられる刺激的な名曲だ。
もともとは同じモータウンに所属するグループ、ジ・アンディスピューテッド・トゥルースが1972年5月にシングルとしてリリースした3分半の曲だったが、同年後半にこの曲の作者でありプロデューサーであるノーマン・ホイットフィールドが、ザ・テンプテーションズ用に12分に及ぶ大曲にアレンジし、同年の7月にリリースされたアルバム『オール・ディレクションズ』に収録された。
そして7分の編集版がシングル・カットされると、全米1位の大ヒットとなり、その年のグラミー賞で最優秀ヴォーカルR&Bパフォーマンス・グループ賞など3部門を受賞した。
ニュー・ソウルやファンクの影響の濃いアレンジが衝撃的なほどのカッコ良さだ。シビれるようなイントロは、何度聴いてもワクワクさせられる。
若くして死んだ父親があまりに近所の評判が悪いことを気にし、母親に「パパはどんな人だったの?」と息子が訊くという歌詞である。
「パパは生涯定職に就かず、詐欺師のように人から金をまきあげ、借金にまみれ、女と酒に溺れ、転がる石のような人生だった」と母親はありのままを説明する。
そして、彼が帽子を置いた場所が我が家になり、母と息子に残したのは孤独だけだ、と嘆く。
何者にもなれず、妻と息子にもなにも残してやれずに死んでいった、どこにでもいるろくでなしの男について歌った、昔ながらのブルースの歌詞のようでもあり、今でも変わらず世界中どこにでも起きている、切なくやりきれない不幸がリアルに歌われている。
↓ 7分に編集されたシングル・バージョン。全米1位の大ヒットとなった。
↓ ジ・アンディスピューテッド・トゥルースによるオリジナル・バージョン。
(Goro)