The Smiths
Panic (1986)
3rdアルバム『クイーン・イズ・デッド』からわずか1か月後にリリースされた、アルバム未収録のシングルで、全英11位のヒットとなった。
あるとき、ジョニー・マーとモリッシーがBBCラジオ1を聴いてると、チェルノブイリ原発事故のニュースが流れ、そしてその直後にDJは、ワム!の「I’m Your Man 」をかけたという。
「いったいなんの関係があるんだ?」とマーはそのときモリッシーと話したことを憶えているという。「チェルノブイリのニュースを聞いた数秒後には、「I’m Your Man」に合わせて飛び跳ねるように勧められるんだから」。このときの会話がモリッシーの作詞につながった可能性が高いと彼はコメントしている。
ディスコを焼き払え
ありがたきDJ様を吊し上げろ
いつもかけて下さる音楽のお礼に
僕の人生の足しになるようなことを
ひと言も歌ってない曲のお礼に
さあ、いまいましいDJを吊し上げようDJを吊るせ!
DJを吊るせ!
DJを吊るせ!
DJを吊るせ!(対訳:小林政美)
この過激な歌詞は当時問題になったらしいが、わたしは初めて聴いたときに爆笑した。
2分ちょっとの曲で何回「Hang the DJ!」って言ってるのだろうと数えてみたら、34回も言っていた。
こんな曲を楽しげに、クネクネ腰踊りをしながら歌う猛毒モリッシーのユーモラスな狂気性もスミスならではの魅力に違いない。
モリッシーのクネクネ腰踊りを初めて見た人はたいてい「キモい」と言うけれども、あれはやっと部屋から出る決心をした引きこもりが、自分を受け入れてくれる居場所を見つけて、喜びの余り忘我の境地で歌っている状態なのだと思う。
スミス結成以前のモリッシーを描いた映画『イングランド・イズ・マイン』にも、初めてモリが人前で歌うシーンで、歌に没入してクネクネ踊りを始め、バンドも客もドン引きするという笑えるシーンがあった。
だから大目に見てあげてほしい。
慣れれば、案外カワイイと思えてきます。
(Goro)