ザ・バーズ【名曲ベストテン】The Byrds Best 10 Songs

The Byrds - Greatest Hits

1960年代のアメリカで、わたしが一番好きなバンドがこのザ・バーズだ。

美しく透き通ったコーラスと煌めくようなギターが絡み合い、柔らかな耳あたりでありながらビート感もある独特のバーズ・サウンドは、当時世界を席巻していた英・米の2トップ、ザ・ビートルズとボブ・ディランの音楽を融合したような音楽だった。

バーズ・サウンドが誕生したと同時に「フォーク・ロック」という概念も生まれ、そこからさらに変幻して「サイケデリック・ロック」を生み、さらには「カントリー・ロック」も創造するなど、ロックの可能性をグイグイと拡げた、60年代米国ロックの立役者である。

そんなザ・バーズの多くの名曲の中から、わたしがお薦めする【名曲ベストテン】を選んでみました。

第10位 ミスター・スペースマン
Mr. Spaceman (1966)

ロジャー・マッギン作。サイケデリックな指向を見せた名盤3rd『霧の五次元』に、なぜかホンキー・トンク風のロックンロールが収録されているのも面白い。この2年後に展開されるカントリー・ロックの先鞭をつけたシングルと言えるかもしれない。全米36位。

The Byrds – Mr. Spaceman (Audio)

第9位 イージー・ライダーのバラード
Ballad of Easy Rider (1969)

映画『イージー・ライダー』の製作・脚本・主演を務めたピーター・フォンダは初め、ボブ・ディランに主題歌を依頼したという。しかしディランはそれを断り、その場で紙ナプキンに短い詩を走り書きし、「これをマッギンに渡してくれ。彼ならどうしたらいいかわかるはずだ」と言ったという。

その詩をもとにロジャー・マッギンが書き上げたのがこの曲で、『イージー・ライダー』の主題歌として使用された。

Ballad of Easy Rider (Long Version)

第8位 ヒッコリー・ウインド
Hickory Wind (1968)

カントリー・ロックを完成させた6枚目のアルバム『ロデオの恋人』収録。グラム・パーソンズの作で、リード・ヴォーカルも彼がとっているだ。

この歌はいろいろな樹木のことを歌っている。せつないような、懐かしいような、木々の葉をやさしく揺らす、爽やかな風のようなカントリー・ワルツの名曲だ。

Hickory Wind

第7位 すっきりしたぜ
I’ll Feel a Whole Lot Better (1965)

初期バーズのオリジナル曲のほとんどを書いた、ジーン・クラークの作。

軽快なギターリフと爽やかなコーラスを主体としたスピード感のあるサウンドは、これぞバーズ流のロックンロール、といった名曲だ。

The Byrds – I'll Feel A Whole Lot Better (Audio)

第6位 ターン・ターン・ターン
Turn! Turn! Turn! (1965)

旧約聖書の「伝道の書」の一部に、米国のフォーク歌手ピート・シーガーが曲を付けた作品。

2ndアルバムのタイトル曲であり、シングルとしても全米1位に輝いた大ヒット曲。
「万物はすべて変わっていく」と歌う、当時の急激な時代の変化や、反戦的なメッセージも含んだ曲だ。

美しいギターサウンドと、美しいハーモニーが素晴らしい。何十年聴いていても飽きない。

The Byrds – Turn! Turn! Turn! (To Everything There Is A Season) (Audio)

第5位 霧の5次元
5D (Fifth Dimension) (1966)

3rdアルバム『霧の5次元』のタイトル曲。一瞬、ボブ・ディランの曲かなと思うが、ロジャー・マッギンの作である。もうすっかりディランが乗り移っているかのようだ。

歌詞はアインシュタインの相対性理論を要約したもの、ということだが、よくわからない。

The Byrds – 5D (Fifth Dimension) (Audio)

第4位 自由の鐘
Chimes of Freedom (1965)

ボブ・ディラン作。ザ・バーズによる数多いディラン・カバーの中でも出色の出来のひとつだ。

ディランには申し訳ないけれど、バーズのカバーで聴いて初めて「こんな良い曲だったのか!」と驚いたものが何曲もある。バーズのおかげで、ディランの楽曲が実にメロディ豊かでポップであることに気づかされ、難解な歌詞を書くフォーク・シンガーから、稀代のメロディメーカーへと、ディランの印象が変わったものだった。

The Byrds – Chimes Of Freedom (Audio)

第3位 霧の8マイル
Eight Miles High (1966)

ジーン・クラーク、ロジャー・マッギン、デヴィッド・クロスビーによる共作。3rdアルバム『霧の五次元』に先行してリリースされたシングルで、全米14位のヒットとなった。

コルトレーンの影響と言うマッギンのギターのフリー・ジャズ風のイントロで始まるこの曲は、歌詞の内容もアシッド・ソング的であり、史上初のサイケデリック・ロックとして知られている。

The Byrds – Eight Miles High (Audio)

第2位 マイ・バック・ページ
My Back Pages (1967)

4thアルバム『昨日より若く』の中でも俄然輝きを放っている、ボブ・ディランのカバーだ。

アルバムのタイトル『昨日より若く』はこの曲の一節から取られている。
初期のプロテスト・ソングに見られるような政治的理想主義に凝り固まった考え方を捨て、もっと自由に感じ、考えることができるようになったことを、「今の僕はあの頃よりもずっと若い」と表現している。

The Byrds – My Back Pages (Audio)

第1位 ミスター・タンブリン・マン
Mr. Tambourine Man (1965)

全米・全英ともに1位を獲得し、ザ・バーズを世界的に大ブレイクさせた代表曲だ。12弦ギターの響きが特徴的なこの透明感あふれる美しいサウンドは、ロック史における最も重要な発明のひとつに数えられていいだろう。

この斬新すぎるスタイルのカバーには当時のリスナーたちも驚いただろうけど、たぶんいちばん刺激を受けたのは作者のボブ・ディランだったのではないか。この2ヶ月後に彼は、あの大傑作「ライク・ア・ローリング・ストーン」を発表するのだ。

このあたりの、ロックが怒涛の勢いで変容・進化していく過程は、ゾクゾクするほどだ。

The Byrds – Mr. Tambourine Man (Audio)

デビューからたった3年のあいだにアルバムを6枚発表し、フォーク・ロックとサイケデリック・ロックとカントリー・ロックを創造し、ロック史に重大な影響を与えてきたバーズだったが、その後はメンバーの脱退などで不安定な状態となり、作品は方向性を迷いながら失速してしまった感が否めない。

ザ・バーズを最初に聴くならベスト盤もいいけれど、まずは1st『ミスター・タンブリン・マン』をわたしはお薦めしたいと思う。

(Goro)