⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
T.Rex
“Electric Warrior” (1971)
マーク・ボラン(ヴォーカル&ギター)とスティーヴ・トゥック(パーカッション)の2人組で1968年にデビューした英ロンドン出身のティラノサウルス・レックスは、サイケデリック・フォークとでも言うべき独特のスタイルで4枚のアルバムを出したものの、今ひとつパッとしなかった。
1970年末にT.REXと改名し、ベースのスティーヴ・カーリーとドラムのビル・レジェンドが加わって4人組のバンドとして再スタートすると、1971年9月に発表された通算6枚目の本作で全英1位の大ブレイクを果たした。
日本でもオリコン・アルバムチャートで19位まで上がるヒットとなり、翌年には日本武道館で公演するほど人気が高まった。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 マンボ・サン
2 コズミック・ダンサー
3 ジープスター
4 モノリス
5 リーン・ウーマン・ブルーズ
SIDE B
1 ゲット・イット・オン
2 プラネット・クイーン
3 ガール
4 モティヴェイター
5 ライフ・イズ・ア・ガス
6 リップ・オフ
A1「マンボ・サン」は、パッと見は「なにこれ?」って感じなのに、一口食べてみると意外なほどに良い味の居酒屋のお通しみたいな、「おっ、この店は当たりだぞ」と確信するようなオープニングだ。
シングルカットされたB1「ゲット・イット・オン」は全英1位、全米10位の世界的ヒットとなり、T.レックスの代表曲となった。そして2ndシングルの「ジープスター」も全英2位の連続ヒットとなった。
チープで単純なギター・リフによるブギーが彼らのトレードマークだけれども、しかし「コズミック・ダンサー」や「モノリス」「ガール」「ライフ・イズ・ア・ガス」などのスローな楽曲がまた良いのだ。どれもシンプルだが印象的なメロディが耳に残る。
T.レックスはベスト盤も良いけれども、こうしたあまり有名ではない曲がまた味わい深く、オリジナル・アルバムを聴くべき魅力となっている。
トニー・ヴィスコンティという当時27歳のアメリカ人プロデューサーの優れた手腕によって、アルバムは個性的なサウンドを造形した。独特の浮遊感と電気加工感が、どこか非現実的でSFチックだ。
バック・ヴォーカルを務めた元タートルズのハワード・ケイランとマーク・ボルマンの声が女性コーラスみたいに聞こえるため、全体に中性的な雰囲気を醸し出している。この感じがマーク・ボランの容姿と併せて、グラマラスな印象につながっていると思われる。
初心者向きのコードが2つか3つ、歌メロは単純至極、歌詞なんかまったく意味は無い。すべてがニセモノっぽくて人工的で中身がスカスカ。でもそれこそがT.レックスの魅力であり、唯一無二のカッコ良さだ。
当時中学生ぐらいだったイギリスの子供たち、後のパンクスたちが「これならオレにもできるかも!」と思っただろうことは、想像に難くない。
↓ 全英1位、全米10位の世界的ヒットとなた、T.レックスの代表曲「ゲット・イット・オン」。
↓ 全英2位のヒットとなった「ジープスター」。
(Goro)