ロキシー・ミュージック『ロキシー・ミュージック』(1972)【最強ロック名盤500】#186

⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#186
Roxy Music
“Roxy Music” (1972)

ロキシー・ミュージックを初めて聴いたのは、彼らの1stシングルである「ヴァージニア・プレイン」だった。

ちょっと不意打ちを食らったみたいな感じだった。

「新しいっ!」と思った。

もちろんリアルタイムではなく、発表からすでに二十数年が経過し、もうパンクもニューウェーブもオルタナも聴き尽くした後で聴いたにもかかわらず、それでも「新しいっ!」と思ったのだ。久々にロックで衝撃を受けた感じだった。

ポップなわかりやすさと、ぶっ壊れ具合とが絶妙なバランスだ。当時のアナログ・シンセサイザーの変態的なトッピングがまた面白い。結成当時のYMOが影響を受けているのがすごくよくわかる。

本作はその後で聴いた。1972年6月にリリースされた、ロキシー・ミュージックの1stアルバムである。

【オリジナルLP収録曲】(米国盤)

SIDE A

1 リ・メイク/リ・モデル
2 レディトロン
3 イフ・ゼア・イズ・サムシング
4 ヴァージニア・プレイン
5 2 H.B.

SIDE B

1 ザ・ボブ
2 チャンス・ミーティング
3 ウッド・ユー・ビリーヴ?
4 シー・ブリーズィズ
5 ビターズ・エンド

わたしが衝撃を受けた「ヴァージニア・プレイン」は、1972年6月に発売された本作の英国盤には収録されておらず、その1ヶ月後にシングルでリリースされ、全英4位のヒットとなった。

同曲は少し遅れてリリースされた米国盤に追加収録され、さらにその後のレコード、CDは米国盤に倣ってすべて収録されている。

ロキシー・ミュージックには、スーツがよく似合うダンディな紳士然としたブライアン・フェリーと、ハゲのロン毛でギンギラの怪人ブライアン・イーノという、好対照の二人のブライアンが存在する。

ボブ・ディランの影響を受けた、ヴォーカルとソングライターを担当するフェリーと、アナログ・シンセサイザーを担当するイーノの個性がまったく相反したまま無理やり結合した結果が、このなんとも異様な「洗練された畸形」とでも言うべき斬新な音楽なのだと思う。

オープニングの「リ・メイク/リ・モデル」から、いきなりぶっ飛んでいる。バンドの各パートが個性を主張する学級崩壊のような状態なのに、しかし極めてタイトな演奏を聴かせるのである。

なんだこれは、とわたしは思ったものだ。遊んでいるように見えるが、遊んでいるわけではないのだった。なんというか、野武士集団が、革命を起こしたるという気概で一致団結しているようなギラギラしたものを感じる。

超絶的な演奏技術をひけらかしたり、インテリぶって前衛を気取るようなちょこざいなバンドでもなく、そこはかとなくチープで妖しげな香りがまたいい。A3「イフ・ゼア・イズ・サムシング」やA5「2 H.B.」のような一見エレガント風のものもあるが、よく聴くとやっぱり過剰なアレンジが錯乱的だったりする。

このぶっ飛んだアルバムはしかし、評価が分かれる作品でもあるのだろう。

ロキシー・ミュージックのアルバムをランク付けしているあるサイトでは、全アルバム中最低評価であり、同様のまた別のサイトでは逆に最高の評価であった。

より整理され、聴きやすくなったとも言える2nd以降の方が評価が高い場合が多いようだが、わたしはこのなんとも衝撃的で貴重な奇形種である1stがやっぱり面白いと思ってしまうのだ。

↓ 全英4位のヒットとなった1stシングル「ヴァージニア・プレイン」。

↓ ポスト・パンク/ニュー・ウェイヴを先取りしたような、オープニングの「リ・メイク/リ・モデル」

(Goro)

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