英ロンドン出身のロッド・スチュワートは、1964年頃からいくつかのバンドを渡り歩き、1968年にジェフ・ベック・グループに参加、翌年にフェイセズに加入する。そして同年にソロとして、1stアルバムを発表した。
70年代に数々のヒット曲で世界的な成功を果たし、日本でも洋楽アーティストの中でも特に高い人気と知名度があり、日本の車のCMなどにも出演した。
21世紀に入ってからはアメリカのスタンダード曲をカバーした『ザ・グレイト・アメリカン・ソング・ブック』が大ヒットとする。シリーズ化されて全5作が発表された。
デビューから50年以上が経過し、今なお現役である。
ロッドの特長はもちろんあの声だ。
あのハスキー・ヴォイスは、若い頃からどこか老人の声のようで、人生経験によって刻まれる年輪のような深みをすでに持ち得ているようでもあった。
そんなロッドの声には、人生を振り返るような曲がよく似合っていて、わたしは好きだった。
傷ついたり、悩んだり、過去の過ちを恥じたり、懐かしく思い出したり。様々な人生を、優しく励ますような温かみがあり、思わず胸が熱くなる歌声だ。
だからロックからスタンダード・ナンバーまで、幅広く歌えて、幅広い層に支持されるんだろうなと思う。
以下は、わたしが愛する、ロッド・スチュワートの至極の名曲ベストテンです。
ちょっと70年代の泣きメロ系に偏ってしまって、ごめんなさい。
Gasoline Alley
2ndソロアルバム『ガソリン・アレイ』のタイトル曲。
当時フェイセズのメンバーでもあった盟友、ロン・ウッド(現ローリング・ストーンズのギタリスト)が全面的に参加したアルバムで、この曲は2人による作詞・作曲となっている。
ロッドの歌にロンのギターがユニゾンで、まるで2人で仲良く歌っているかのように、ぴったりと寄り添っているのが微笑ましい。
You’re in My Heart
8枚目のアルバム『明日へのキック・オフ(Foot Loose & Fancy Free)』からのシングルで、全英3位、全米4位のヒットとなった。ロッド自身の作詞・作曲である。
ロックンロールも良いけれど、わたしにはアコースティック・サウンドのほうがロッドの声の深みやせつなさをより感じられて、より魅力的に聴こえる。
Reason to Believe
ロッドの出世作となった3rdアルバム『エヴリ・ピクチャー・テルズ・ア・ストーリー』からのシングルで、全英1位の大ヒットを記録した。
原曲は、アメリカのシンガー・ソングライター、ティム・ハーディンが1966年に発表した曲。
泣きメロがフィドルでより強調されて、グッとくる。
Tonight’s the Night (Gonna Be Alright)
7枚目のアルバム『ナイト・オン・ザ・タウン』からのシングルで、全英5位、全米1位の大ヒットに。作詞・作曲はロッド自身だ。
日本ではスバルの車、レガシィのCMにも使用された。
ストリングスのアレンジがいい。
Downtown Train
1989年に発売された『ストーリーテラー~ザ・ベスト・オブ・ロッド・スチュワート』に収録され、シングル・カットもされた曲で、全英10位、全米3位のヒットに。
トム・ウェイツの作で、彼が1985年に発表したアルバム『レイン・ドッグス』の収録曲。
80年代は低迷気味だったロッドにとって、「アイム・セクシー」以来11年ぶりの英米同時TOP10入りだった。
Sailing
6枚目のアルバム『アトランティック・クロッシング』からのシングルで、全英1位、全米58位。
原曲は、イギリスのバンド、サザーランド・ブラザーズが1972年に発表した曲だ。
嵐の海で今まさに命を失わんとする船乗りが、神のもとへ召されていく覚悟や想いを歌った哀しい曲だ。
The Killing of Georgie (Part I and II)
『ナイト・オン・ザ・タウン』からのシングルで、全英2位、全米30位。ロッド自身による作品。
ロッドの実在の友人で、非業の死を遂げた、ゲイのジョージーの生涯について歌った曲だ。
曲の後半は、ビートルズのあの名曲と同じメロディで「ジョージー、いかないでくれ、ここにいてくれ」とリフレインが繰り返される。
The First Cut Is the Deepest
名盤『ナイト・オン・ザ・タウン』からのシングルで、全英1位、全米21位の大ヒット曲。
原曲はイギリスのシンガー・ソングライター、キャット・スティーブンスが1967年に発表した曲。「最初の傷がいちばん深い」と歌う、失恋の歌だ。
I Was Only Joking
『明日へのキック・オフ(Foot Loose & Fancy Free)』からのシングルで、全英5位、全米22位。ロッドとゲイリー・グレインジャーによる共作だ。
悪ガキだった少年時代から、いい加減に生きてた青春時代まで、過去を振り返って「意気地がないから、本心を隠してふざけてばかりいたんだ、なんてバカだったんだろう」と歌う、泣ける歌だ。まさにロッドの真骨頂。
間奏ではマンドリンとエレキギターまでが泣かせにかかってくる。
Maggie May
『エヴリィ・ピクチャー・テルズ・ア・ストーリー』からのシングルで、ロッドの大ブレイク作となった、全英1位、全米1位の大ヒット曲。ロッドとマーティン・クイッテントンによる共作だ。
当初はシングル「リーズン・トゥ・ビリーヴ」のB面だったけれど、ラジオのDJたちがこちらを気に入ってかけたことから火が点き、ヒットした。
歌で物語を語る「ストーリーテラー」として人の心を掴んでしまう才能を持ち合わせたヴォーカリストの、代表作だ。
入門用にロッド・スチュワートのアルバムを最初に聴くなら、『スーパースター・ストーリー ザ・ベスト・オブ・ロッド・スチュワート~』がお薦めだ。最初に聴くべき代表曲はすべて網羅されている。
以上、ロッド・スチュワート【名曲ベストテン】でした。
(by goro)