プライマル・スクリームは1984年、クリエイション・レコードと契約し、12弦ギターの音色が特徴的で、ザ・バーズのヴォーカルをヘロヘロにしたようなシングル「オール・フォール・ダウン」でデビューする。
1stアルバムまではフォーク・ロック風のサウンドだったけれども、2ndでいきなりストゥージズのようなのガレージ・ロックに転身し、さらに3rdでは当時流行のハウス・ミュージックを導入し、その後もアメリカ南部のルーツ・ミュージックを志向したり、一転してエレクトロニカのアルバムを作ったりと、良く言えばチャレンジ精神旺盛、悪く言えば節操がない活動を続けてきた。
われわれファンはついて行くのに必死だが、これほど豊かなアイデアと引き出しを持ち、アルバムの度に新しいサウンドを創造し、ロック・シーンに影響を与え続けてきたバンドは他にいない。
ここではそんなプライマル・スクリームの、わたしが愛する10曲をランキングにして選んでみました。
ただ、わたしはやっぱり最初期のプライマルから入ったので、ダンス・ミュージックやエレクトロニカよりも、どうしても彼らの原点である歌モノを選んでしまう傾向にあるようだ。
その辺りは若いファンの方の好みとはギャップがあると思うけれども、あくまで「初期ファン世代」のチョイスだと思って面白がっていただければと思う。
Ivy Ivy Ivy
2ndアルバム『プライマル・スクリーム』からのシングル。わたしはこの曲で彼らを知った。
埃っぽいインディーズの匂いがプンプンしていて、セックス・ピストルズやらラモーンズやらストゥージズやらグラム・ロックやら、いろんなものが混ざった結果の、これ以上はないというぐらいピュアなロケンロールだ。当時はこんなバンドはいなかった。ダサっ!と思いながらも、妙に心惹かれたものだった。それ以来の、彼らのファンだ。
あらためて聴くと、ホントに彼らの原点を見るようで、微笑ましいし、カッコいい。
Kowalski (1997)
1997年の5thアルバム『バニシング・ポイント』からのシングル。
カンの「ハレルヤ」のドラム・サンプルと、ファンカデリックの「ゲット・オフ・ユア・アス・アンド・ジャム」のベースラインをアレンジして使用している。ベースを弾いているのは元ストーン・ローゼスのマニだ。
タイトルの「コワルスキー」は、1971年の映画『バニシング・ポイント』でバリー・ニューマンが演じた主人公の名前である。わたしはこの映画が大好きだ。同映画の様々なセリフのサンプルも使用されている。
Where the Light Gets In (2016)
2016年の11thアルバム『カオスモシス』から、リード・シングルとなった曲だ。
60年代キャンディポップと80年代エレクトロサウンドを融合して、キラッキラにシュガーコーティングした正露丸みたいな、いつものことながら自由すぎる、ノスタルジックなのに最新型の、愛すべきエレクトロ・ポップだ。
Come Together (1990)
この曲はまず1990年8月にシングルとしてリリースされた。
91年の『スクリーマデリカ』に収録されたのはそのリミックス版で、ボビーの歌が入っていない、バックトラックとコーラスのみのバージョンだ。
それまでのガレージ・ロック路線からガラリと変わり、ハウスとロックを融合した画期的な作品だった。今から思うと、ここがプライマル・スクリームの大きなターニング・ポイントだったのだろう。
Higher than the Sun (1991)
1991年リリースの3rdアルバム『スクリーマデリカ』からのシングル。緩やかなビートの、幻想的で、未来的で、サイケデリックな曲だ。ボビー・ギレスピーはこの曲について「まるで別の惑星に飛び降りたような感覚」と語っている。
初めて聴いたときはあまりの奇妙さに「なんじゃこりゃ!」と思ったものだったが、今聴くとそこまで奇妙なものでもないなと思う。普通に良い曲だ。
Rocks (1994)
1作ごとに音楽性をガラリと変え、意表をついて楽しませてくれる彼らが1994年にリリースした4thアルバム『ギヴ・アウト・バット・ドント・ギヴ・アップ』はメンフィス録音で、1970年前後のローリング・ストーンズを思い出させるような、南部の香りのするロケンロール・アルバムだった。
この「ロックス」は、そのアルバムからのシングルで、全英7位の大ヒットとなった。この大ヒットによって、プライマル・スクリームの名は日本でも一躍メジャーになったものだ。
I’m Losing More Than I’ll Ever Have (1989)
2ndアルバム『プライマル・スクリーム』収録曲。彼らのアメリカ南部志向の最初の一歩がこれだったように思う。
さらに彼らは、この曲のエンディング部分を取り出してリミックスした「ローデッド」という、画期的なダンスナンバーを拵えると、クラブ・シーンで支持され、全英シングルチャート16位と、彼らにとって初のヒットシングルとなった。
「ローデッド」はプライマルの代表曲として知られているけれども、わたしはこのオリジナルの方が好きだ。
Country Girl (2006)
2006年リリースの8thアルバム『ライオット・シティ・ブルース』からのシングル。全英5位と、プライマル・スクリームにとって全キャリア中最高位のヒットとなった、彼らの代表曲だ。
これを初めて聴いたときは本当に感心した。
伝統的なカントリー・ミュージックのテイストを残しながらも、2000年代にふさわしい新しいロックンロールの響きを纏い、実験的なものでも奇を衒ったものでもない、完成したカッコよさと美しさがあった。
やっぱり凄いな、プライマル・スクリームは、と思ったものだった。
Velocity Girl (1986)
1986年にリリースされた彼らの2枚目のシングル「クリスタル・クレセント」のB面に収録された曲。
たったの1分22秒しかない短い曲だけれども、ここにはプライマル・スクリームの音楽の、真にピュアな原点がある。余分なものを全て削ぎ落としたような、ポップ・ソングの魅力を凝縮した、百万回聴いても飽きると思えない、不滅の82秒だ。
Movin’ On Up (1991)
91年リリースの名盤『スクリーマデリカ』の、ゴスペル風のオープニング・トラック。
他の収録曲に比べて、ダンス色よりロック色ほうが強いのは、プロデューサーをジミー・ミラーが務めたからだろう。ローリング・ストーンズの『ベガーズ・バンケット』から『山羊の頭のスープ』までの、黄金期の名作群をプロデュースした、あのジミー・ミラーである。
なのでエンディングで「悪魔を憐れむ歌」を彷彿とさせるギター・ソロが出てきたりするのも、意識的に違いない。
プライマル・スクリームの入門用には、彼らの代表曲を一望できるシングル集『マキシマム・ロックンロール』が最適だ。「ヴェロシティ・ガール」から始まり、彼らの音楽性の変遷と振幅を年代順に楽しめる。
コメント
先日に続きになってしまいますが(笑)…
ワタクシが渡英した1990年にロンドンで通っていたクラブでは、もうローデッドがかかりまくりですごかったですね。懐かしい。
僕もプライマルスクリームは2ndアルバムから入ったクチです。
ちなみにランキングに入れているカム・トゥゲザーのPVでボビーが着用しているサイクルジャージ風の洋服は、僕の友人の女性(日本人)が作ったものです。そんなご縁でスクリーマデリカ期の来日の際は、ゲストリストに載せてもらって観ることが出来ました~♪
おー、プライマルも観ましたか、羨ましいです。しかもあの時代なんですね!
やっぱりローデッドは人気でしたか(笑)
わたしはなにしろ、踊る趣味がまったくないので、当時も今も歌ナシよりも歌アリ派なんですよね。
でも2ndから入ったアイアイ♪さんならきっと「アイム・ルージング・モア‥」の良さもわかっていただけるだろうと思います(笑)