米オクラホマ州出身のレオン・ラッセルは、1970年代初頭に流行した「スワンプ・ロック」の代表格の一人だ。
「スワンプ」とは、「沼」とか「湿地」という意味だ。
アメリカン・ルーツ・ミュージックの一大産地である米南部の、土の匂いを感じさせるようなサザン・ロックの中でも、まるでルイジアナ州の湿地帯のような、土どころか沼の匂いを感じさせるぐらいドロドロで渋いやつがスワンプ・ロックということだろうとわたしは理解している。
しかしレオン・ラッセルの音楽は、たしかに渋くて、クセと粘り気は強いが、苦みと甘み、荒っぽさと繊細さを兼ね備えている、奥深い味わいの独特の音楽だ。彼の楽曲には、その代表曲からもわかるように、都会的でポップなものも多い。スワンプ・ロックの要素は、彼の一部分でしかないようにも思える。
もともと彼は10代の頃から音楽活動をはじめ、21歳ですでにロサンゼルスでは有名な腕利きのスタジオミュージシャンだった。そんな仕事の現場から、天才的な吸収力で最新の音楽を学び、独創的な音楽を創作する術を身につけたのだろう。
以下はわたしがお薦めする、最初に聴くべきレオン・ラッセルの至極の名曲5選です。
A Song for You
デビュー・アルバム『レオン・ラッセル』のオープニング・トラックで、彼にとって最初のシングルでもある、代表曲だ。
この曲はすでに、様々なジャンルの、200人を超えるアーティストたちがカバーしているそうだ。アメリカン・ポップスのスタンダードと言うべき、不滅の名曲。
Hummingbird
1stアルバム『レオン・ラッセル』収録の名曲。ハミングバードとは、花の蜜を吸う世界一小っちゃい鳥、ハチドリのことだ。
「一生あの娘しか愛さない」と言い切るほど惚れてしまった女性をこのハチドリに喩えて、「飛んで行かないでおくれ!」と絶叫する、せつないラヴ・ソングである。
Tight Rope
全米11位のヒットとなった、レオン・ラッセルの最も売れた曲だ。日本でも当時のオリコン洋楽チャートで1位になっている。
彼の世捨て人のような見た目に比べて、その楽曲はずっとポップでキャッチーであり、わたしは彼のそういうギャップも好きだ。
This Masquerade
全米2位と売れまくった名盤3rdアルバム『カーニー(Carney)』収録曲で、後にジャズ畑のジョージ・ベンソンがカバーして全米10位のヒットとなった。
でも日本ではカーペンターズによるカバーのほうが圧倒的に有名だ。カレン・カーペンターのエレガントな低音がこの曲にまたぴったりだった。
Lady Blue
75年のアルバム『ウィル・オ・ザ・ウィスプ(Will O’ the Wisp)』からのシングルで、全米14位のヒットとなった。
わたしはこの、深々とエコーの効いた声が響く、広がりのある空間の感じが好きだ。これはもちろん、夜に聴くべき音楽。
入門用にレオン・ラッセルのアルバムを最初に聴くなら、『追憶の日々~ベスト・オブ・レオン・ラッセル(Retrospective)』がお薦め。最初に聴くべき代表曲はすべて網羅されています。
(Goro)