最低のクソ野郎たちの最高のロックンロール 〜ジョニー・サンダース&ザ・ハートブレイカーズ『L.A.M.F.』(1977)【最強ロック名盤500】#245

L.A.M.F. - DEFINITIVE EDITION

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#245
Johnny Thunders & The Heartbreakers
“L.A.M.F.” (1977)

ニューヨーク・ドールズ解散の後、ジョニー・サンダースが1975年に結成したのがこのハートブレイカーズだった。

ハートブレイカーズは本拠地のニューヨークより先にロンドンで支持され、後のロンドン・パンクの連中にパンクなロックンロールとハードなドラッグを教えることになる。後者を教えた相手はたぶんシド・ヴィシャスとかだろうが、それをロック伝説と言えばいいのか、ただのイタいエピソードと言うべきなのか、よくわからない。

“Born To Lose”、失うために生まれてきた、敗北のために生まれてきた、生まれながらの負け犬、どう訳してもそれは全部ジョニー・サンダースの破滅的な人生を言い当てている気がする。

彼は人並み以上のソングライティングの才能があり、ギタリストとしても素晴らしかった。彼のギターにはなんだかわからないけど、惹きつけるものがあった。

そんなギタリストはそんなにいない。超絶技巧や速弾きをひけらかす大道芸人みたいなギタリストはいくらでもいるけど、真にカッコいいギタリストはそんなにたくさんはいないのだ。ジョニーは間違いなくそのひとりだった。

本作はそんなジョニーが率いたハートブレイカーズが残した唯一のアルバムであり、1977年10月にリリースされた。タイトルは、”Like a Motherfucker”の略である。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 ボーン・トゥ・ルーズ
2 ベイビー・トーク
3 オール・バイ・マイセルフ
4 アイ・ワナ・ビー・ラブド
5 イッツ・ノット・イナフ
6 チャイニーズ・ロックス

SIDE B

1 ゲット・オフ・ザ・フォン
2 パイレート・ラブ
3 ワン・トラック・マインド
4 アイ・ラブ・ユー
5 ゴーイン・ステディ
6 レット・ゴー

アルバムはインディ・レーベルからリリースされ、まともなミキサーがいなかったのか、ひどく音が濁った状態で発売された。批評家からも、楽曲は絶賛されたが、ミックスを問題視された。

その後何度もミックス違いのものが再発売されたが、2020年についに行方不明だったオリジナル・ミックスのマスターテープが発見され、2021年に決定版として『L.A.M.F. – the FOUND ’77 masters』が発売された。これはサブスクなど配信でも聴けるが、1曲目の「ボーン・トゥ・ルーズ」のイントロのギターを聴いた瞬間に思わず声を上げて笑ってしまったほど、リアルで力強くクリアな音にわたしは感動した。およそ50年の時を経て、ついに本物のジョニーに会えたような気分だった。

70年代のパンク・アルバムには名盤も多いが、ロンドン・パンクではピストルズの『勝手にしやがれ』、N.Y.パンクではこの『L.A.M.F.』が最高峰だとわたしは思う。どちらも奇跡のように素晴らしい。

しかし、名プロデューサーの手腕に大いに助けられたピストルズに比べて、『L.A.M.F.』は逆にそこが足りなかった。まともなプロデュース、まともなミックスさえされて、まともなレコード会社から出されていたら、本作は『勝手にしやがれ』や『ラモーンズの激情』と同じぐらいの評価を今でもされているに違いないのだ。

ジョニー・サンダースは、1991年4月23日、米ルイジアナ州ニューオーリンズのホテルでコカインとメタドンのオーバードーズで死去した。38歳だった。

短命に終わったニューヨーク・ドールズから始まり、ほんとにこのジョニー・サンダースという男はなににつけても「残念」という結果がついてまわる男である。

ギタリストとしてもソングライターとしても素晴らしい才能を持ち、これほどの名盤を生みながら、成功することよりも刹那的に生きる道を自ら選んでしまったとしか思えない。

わたしはドラッグに溺れる破滅的なミュージシャンなんかをほんのちょこっともカッコいいなんて思わないし、心からアホだと思っている。

それでもわたしにとってジョニー・サンダースは、愛すべき最高のロックンローラーのひとりであることは永久に変わらなさそうだ。

↓ ハートブレイカーズのと言うより、N.Y.パンクのアンセムとなった名曲「チャイニーズ・ロックス」。

↓ ジョニー・サンダースのテーマソングのような代表曲「ボーン・トゥ・ルーズ」。

(Goro)

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コメント

  1. サカモト より:

    ほんとうに本文の通り!
    ミックス&マスタリングの重要性に気づかせてくれたアルバムです。
    はじめて聴いたときはなぜこれが名盤?と思っていたのですが
    何十年後にミックス違いを聴いて目が覚めたのでした・・・

    • Goro より:

      サカモトさん、コメントありがとうございます。

      そうですね、最初に出たものは本当にひどかったらしいですが、わたしが若い頃に買ったCDはジョニー・サンダース自らがミックスをやり直した『L.A.M.F.リヴィジテッド』というやつでした。いくらかマシになっていたらしいのですが、今回初めて聴いた『L.A.M.F.〜最終版ファウンド・マスター』というやつには本当に驚かされました。

      でも曲順はオリジナルより「ワン・トラック・マインド」から始まる『リヴィジテッド』のほうが好きだったなあ。

      • サカモト より:

        CDで買ったのですが「ボーン・トゥ・ルーズ」で始まってました。
        均整とれてはいたのですがクラッシュやピストルズを聴いた耳では迫力に乏しいものでした。あれはジョニーサンダースがミックスしなおしたものかもしれません。
        のちに知り合いからミックス違いを聴いてカッコよさにおののきました。
        そののちのジョニーサンダースも聞きましたがこのアルバムが群を抜いています。
        日本のバンドがよくカバーをするのも納得です!