ハウリン・ウルフはカッコいい。男の中の男だ。
大きな岩のようなどっしりとした存在感、武骨でありながら、鋭い知性を感じ、肉食獣のように恐ろし気でありながら、深い優しさで包みこむ、そんな多面的な魅力を感じる。ブルース界の高倉健みたいな人だ。
というのはわたしの勝手なイメージだけれども、シカゴ・ブルースではマディ・ウォーターズと並んで彼が二大巨頭だった。
彼らが所属したシカゴのチェス・レコードの栄枯盛衰を描いた映画『キャデラック・レコード』にも描かれている通り、ハウリン・ウルフはマディ・ウォーターズより3歳年上で、欲望のままに生きてトラブルを繰り返すマディに対し、大人の男として「正しく生きろ」と諭す人格者・ウルフはシビれるほどカッコ良かった。
ハウリン・ウルフはミシシッピ州で生まれ、陸軍に入ったりバンド活動をした後に40歳でレコード・デビューした遅咲きの苦労人だ。
ハウリン・ウルフという名前が示す通り、彼の魅力はそのド迫力のダミ声の咆哮ではあるけれども、それだけではない。ギターのヒューバート・サムリンを中心にしたバンドが生み出す独特のスウィングするような、自然に体がゆらゆらと揺れ出すようなグルーヴに、わたしはダミ声以上に魅了されたものだ。
以下はわたしがお薦めする、最初に聴くべきハウリン・ウルフの至極の名曲5選です。
How Many More Years
ハウリン・ウルフが地元の「メンフィス・レコード・サービス」で自主制作した、彼のデビュー・シングル。ウルフ自身が書いた曲で、米R&Bチャートで4位まで上がるヒットとなった。
ここでギターを弾いているウィリー・ジョンソンがどんな男か知らないけれども、この時代にしては異様に歪んだ音から、きっと最高のイカれ野郎だったに違いないと想像できる。
Smokestack Lightning
ウルフ自身が書いたシングルで、米R&Bチャート8位のヒットとなった。後に1stアルバム『モーニン・イン・ザ・ムーンライト(Moanin’ in the Moonlight)』に収録された。
狼の遠吠えのような歌唱が印象的だが、なによりも大きな岩がユラユラと揺れるようなバンドのグルーヴがカッコいい。最高のバンドだ。
Spoonful
2ndアルバム『ハウリン・ウルフ(Howlin’ Wolf)』からのシングル。
大先生の重量級のヴォーカルと、巨人のダンスみたいな独特のグルーヴ、そして宙をキラキラと舞いながら斬りつけてくるようなヒューバート・サムリンのギター、シンプルなのにシビれるほどカッコいい曲だ。
The Red Rooster
2ndアルバム『ハウリン・ウルフ(Howlin’ Wolf)』からのシングルで、チェス・レコードの名ソングライター、ウィリー・ディクソンの作。
先にローリング・ストーンズによるカバーで知ったが、大先生のオリジナルを聴くと流石のストーンズも、バイトの学生ぐらいに思えてくる。
しかしこの曲の魅力もまた、ウルフのド迫力のヴォーカルだけでなく、バックの妙に艶っぽく美しい演奏にもあるのだ。もう一度言うけれども、最高のバンドだ。
Killing Floor
4thアルバム『リアル・フォーク・ブルース(The Real Folk Blues)』のオープニングを飾る曲で、ウルフ自身の作。
惚れて一緒になったはずの女との結婚生活を、「今は毎日が食肉処理場の屠殺場にいるみたいな気分だ」と嘆く、なんとも気の滅入る内容の曲だ。
なのに音楽的には明るく、異色のサウンドが面白い。
入門用にハウリン・ウルフのアルバムを最初に聴くなら、『ヒズ・ベスト』がお薦め。ここに選んだ5曲はもちろん、最初に聴くべき代表曲はすべて網羅されています。
選んだ5曲を続けて聴けるYouTubeプレイリストを作成しましたので、ご利用ください。
♪プレイリスト⇒はじめてのハウリン・ウルフ【必聴名曲5選】はこちら
(Goro)