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Howlin’ Wolf
“Moanin’ in the Moonlight” (1959)
マディ・ウォーターズと共にチェス・レコードの2枚看板として人気を博した、ハウリン・ウルフの1stアルバムだ。
1951年のデビュー以来のシングル曲と、新たに録音した曲によって構成されている。カッコ内は米R&Bチャートの最高順位だ。
【収録曲】
SIDE A
1 モーニン・アット・ミッドナイト (10位)
2 ハウ・メニー・モア・イヤーズ (4位)
3 スモークスタック・ライトニン (8位)
4 ベイビー・ハウ・ロング
5 ノー・プレイス・トゥ・ゴー
6 オール・ナイト・ブギー
SIDE B
1 イーヴル
2 アイム・リーヴィン・ユー
3 モーニン・フォー・マイ・ベイビー
4 アイ・アスクト・フォー・ウォーター (8位)
5 フォーティ・フォー
6 サムバディ・イン・マイ・ホーム
B1「イーヴル」のみがチェスレコードの屋台骨を支えた名ソングライター、ウィリー・ディクソンの作で、他はすべてハウリン・ウルフ自身が書いている。
デビュー・シングルとなったA2「ハウ・メニー・モア・イヤーズ」とそのB面に収録されたA1「モーニン・アット・ミッドナイト」、そしてA6「オール・ナイト・ブギー」の3曲は、ウルフがシカゴに拠点を移す以前に、アイク・ターナーに連れられて訪ねたメンフィスの「メンフィス・レコーディング・サービス」で録音されたものだ。
サム・フィリップスの経営するメンフィス・レコーディング・サービスは、後にかの有名なサン・レコードとなるが、当時はまだ販路がなく、ハウリン・ウルフが録音したものはシカゴのチェスレコードへと貸与された。
そしてこのデビューシングルが大ヒットすると、ハウリン・ウルフとバンドはシカゴに拠点を移し、本格的にチェスレコードで活動を開始する。
最も有名なのはA3「スモークスタック・ライトニン」だ。
〈吠える狼〉の名前そのままの彼のテーマ曲みたいな曲で、ワイルドだけどクールな曲だ。わたしもこの曲が一番好きだ。
それにしても凄い声だけど、わたしはその声以上にウルフのバンドが醸し出す、独特のユラユラと揺れるスウィングするようなグルーヴに痺れた。
ウルフの曲は多くの白人のロックバンドがカバーしているが、しかしこのスウィングのユラユラ感を完璧に再現している演奏は未だに聴いた事がない。このフィーリングはやっぱりウルフとこのバンドでないと出ないのかとも思う。
チェスレコードの盛衰を描いたアメリカ映画『キャデラック・レコード』(2008) では、破天荒で非常識なブルースマンたちの中で、ウルフが唯一紳士的で常識のある人格者として描かれていたのが印象深かった。収入や女のことで自分の思い通りにならないと不満を顕わにするマディ・ウォーターズに対して「そういうものだ。我慢しろ」などと諭したりする。
ウルフ先生がその後のミュージシャンたちにも慕われ敬愛されていたのは、ワイルドな音楽やパフォーマンスはもちろんだけど、尊敬できる人格者でもあったからなのかな、とも思ったものだ。
↓ ハウリン・ウルフの代表曲として知られる「スモークスタック・ライトニン」。
↓ アルバムの冒頭を飾る「モーニン・アット・ミッドナイト」。
(Goro)