2002
前年、突如として巻き起こった、ストロークスやホワイト・ストライプスなどアメリカのバンドによる「ロックンロール・リヴァイヴァル」は、主にイギリスで支持されたムーヴメントだった。本国アメリカでは相変わらずヘヴィ・ロックやポップ・パンクがセールスで圧倒していたし、そのガレージ・ロック的な決して聴きやすくはないサウンドは、広く受け入れられるものではなかったのだ。
そしてこの年になると、ロックンロール・リヴァイヴァルの波に乗って英国産バンドも続々と出てきた。「ロックンロール・リヴァイヴァル」というワードも、少しその枠を広げて「ガレージ・ロック・リヴァイヴァル」と言い換えられるようにもなった。
そして、これぞ名プロデューサーの歴史的仕事と賞賛したいのが、ビースティー・ボーイズやメタリカ、レッチリなどを手掛けてきた鬼才プロデューサー、リック・ルービンが、長く低迷していたカントリー界のレジェンド、ジョニー・キャッシュにオファーし、最新のロック・ナンバーなどを彼に歌わせた『アメリカン・レコーディングス』というシリーズだ。
このシリーズはその選曲と、晩年のジョニー・キャッシュによるその栄光と苦難の人生の重みが刻み込まれたような圧倒的な声の力が大いに話題となり、若いロック・ファンたちにも、あらためて魂を震わす音楽の凄まじさ、偉大さを見せつけ、衝撃を与えた。
それは永らくロックが忘れていた、真にエモーショナルでリアルな歌声による、心の奥底にまで響く感動だった。
『アメリカン・レコーディングス』のシリーズは商業的にも成功し、グラミー賞最優秀コンテンポラリー・フォーク・アルバム賞を受賞し、この年に制作された「ハート」のPVはMTV ビデオ・ミュージック・アワードの最優秀撮影賞を獲得するなど、高い評価を得た。
The Music – The Truth Is No Word
当時18歳だったイギリスの4人組、ザ・ミュージックの1st『ザ・ミュージック』からのシングルで、全英14位のヒットとなった。
その若さから天才とも騒がれたが、初期衝動丸出しの輝くばかりのピュアさが眩しいほどだった。こんなふうに剥き出しのロックを聴いたのは久しぶりだなあと当時嬉しく思ったものだった。
日本でも人気が高く、メンバーも親日家として知られている。このデビューの年から4年連続でフジ・ロックに参戦し、そのうちの1回はオファーがなかったため観客として来ていたら、急遽出演できなくなったバンドの代役として声を掛けられ、演奏したというからえらいものだ。
The Libertines – Time For Heroes
熱狂的に支持された一方で、まったくなにがいいのかわからない、という反応とに二分されるめずらしいバンド、ザ・リバティーンズは、ガレージ・ロック・リヴァイヴァルの英国側の旗手となった。
人気の秘密は、ミック・ジョーンズのプロデュースによるパンク的な生々しいサウンド、ピートとカールというフロント二人によるソングライティングとそのヴィジュアル、彼らのBL風にもとれる友情と破局の物語などで、不人気の秘密は、下手くそすぎる歌となんだかよくわからない曲、というところだ。
残念ながらわたしも、なにがいいんだかまったくわからない派である。
The Coral – Dreaming Of You
流行とは何の関係もない、聴いただけではいつの時代の音楽かもわからなさそうな、サイケデリック・ガレージ・フォーク・ブルースとでも言っていいのかどうかすらよくわからないが、イギリスであることは間違いない、リヴァプール出身のバンド。独特だが、万人ウケもしそうな音楽ではあると思う。
この曲は1st『ザ・コーラル』からのシングルで、全英13位のヒットとなった。
Mando Diao – The Band
ガレージ・ロック・リヴァイヴァルにぴたりとハマった、スウェーデン出身の真正ガレージ・ロック・バンド。
実に楽しそうに演奏する連中だが、メンバー全員がビートルズが大好きというだけあって、これも聴いただけではいつの時代の曲なのかわからない感じだ。まあガレージ・ロックというのはだいたいそういうものだけど。もちろん良い意味で。
アメリカでもイギリスでも売れていないようだが、なぜか日本とドイツでは人気があるらしい。
The Vines – Get Free
オーストラリアのバンドだが、本国では無視されていたところをガレージ・ロック・リヴァイヴァルに沸くイギリスで絶賛されてブレイクした。
この曲は1stアルバム『ハイリー・イヴォルヴド』からのシングルで、全英24位、米オルタナチャートで7位となった代表曲だ。
Good Charlotte – Lifestyles of the Rich & Famous
米メリーランド州出身のポップ・パンク・バンドだ。
2nd『ヤング・アンド・ホープレス』からのシングルで、初めてのチャート入りで全米20位となった出世作。他にも「ジ・アンサー」などがシングル・ヒットしたこのアルバムは全米7位、500万枚を超えるビッグ・ヒットとなった。
Queens Of The Stone Age – No One Knows
カリフォルニア出身のオルタナ系ハード・ロックバンド、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ(石器時代のオカマという意味らしい)は、デイヴ・グロールがドラマーとして参加したこの3枚目のアルバム『ソングス・フォー・ザ・デフ』でブレイクした。
昔ながらの重厚なリフのグルーヴで”ストーナー・メタル”とも呼ばれる彼らだが、技術的にはロー・ファイである、その変なギャップが逆に人気の秘密だったりする。
それにしてもデイヴ・グロールって、ほんとに楽しそうにドラムをたたくなあ。
Red Hot Chili Peppers – By the Way
レッチリの8枚目のアルバム『バイ・ザ・ウェイ』はジョン・フルシアンテのカラーが濃い作品で、ポップで比較的聴きやすいギター・ロックとなっている。
アルバムは世界中でナンバー1となり(日本でもオリコン4位まで上がった)、大ヒットした。
この曲はアルバムのタイトル曲で、メロディアスな部分と激しいカッティングパートが交互に出てくる、メリハリのきいた実にカッコいい曲だ。
Wilco – Jesus, Etc.
4作目のアルバム『ヤンキー・ホテル・フォックストロット』は00年代を代表する名盤に挙げられることも多いが、これまた熱心な支持者と、なにが良いのかまったくわからない人に分かれるだろう。
もともとウィルコはオルタナ・カントリーから出発していたはずだったのだが、あまりに実験精神が旺盛すぎて、もはやカントリーとは似ても似つかない音楽になっているからだ。
しかしたまにこんな曲でチラリと見せる抒情的で深い味わいはさすがだなと思う。
Johnny Cash – Hurt
この年にリリースされたシリーズ4作目『アメリカン・レコーディングスⅣ ザ・マン・カムズ・アラウンド』に収録されたこのナイン・インチ・ネイルズのカバー「ハート」は、当時70歳のジョニー・キャッシュの、病身でありながらもその深く響き渡る歌声と、彼の人生を辿るような感動的なPVが話題を呼んだ。
これは最晩年のジョニー・キャッシュを記録した貴重な映像でもあった。妻のジューンの姿もある。この翌年の5月にジューンが、そして9月にジョニーが、次々と天国へと旅立ったのだ。
選んだ10曲がぶっ続けで聴けるYouTubeのプレイリストを作成しましたので、ご利用ください。
♪YouTubeプレイリスト⇒ ヒストリー・オブ・ロック 2002【ロックが忘れかけていた、魂が震える感動】Greatest 10 Songs
ぜひお楽しみください。
(by goro)