1966
ビートルズが登場し、めでたくロックンロール復活!となってからまだたったの3年しか経っていないというのに、その間にロックは急速に進化し、多様化し、変態化していったことが今回選んだ10曲を聴いていただければわかると思う。
既成のバンドサウンドに飽き足らず、インドの楽器シタールを導入するバンドがあれば、電子楽器テルミンを使うバンドがあったり、スタジオを実験室のように使い、録音した素材を加工したり、何重にもオーヴァーダビングしたり、テープを逆回転させてみたりもした。
様々な手法で作られた実験的なサウンドからは、当時流行のヒッピー文化から広まったマリファナやLSD(当時はまだ合法だった)の幻覚的効果を模した〈サイケデリック・ロック〉や、アルバム1枚にテーマや物語を持たせてひとつの作品として制作する〈コンセプト・アルバム〉が生まれた。その結果、これまで聴いたこともなかったような音世界や、マニアックな変態的作品がロックの歴史に登場してきたのだ。
あくまで英国ではブリティッシュ・ビート・バンド、米国ではフォーク・ロックが中心ではあったが、それぞれのバンドが独自の方向性を打ち出し、その個性を際立たせ、オリジナリティを追求していった。
以下はそんな、多様化と変態化によってさらなる隆盛を見せた1966年のロックを象徴する名曲10選です。
The Rolling Stones – Paint It Black
前年の「サティスファクション」以降、ソングライティングの成長が著しいストーンズは、実験性やサイケ風味も含みながらもキャッチーで完成度の高いこの曲で全米・全英ともに1位に輝いた。
シタールを弾いているのはブライアン・ジョーンズ。彼はどんな楽器もあっという間に習得してしまうという特技がある、一種の天才であった。
The Who – Substitute
ザ・フーらしい、痛快なまでにカッコいいロックナンバーだ。「なにからなにまでウソだしニセモノだ」みたいな、ユーモアも含みながらも意外と核心をついてくる歌詞もいい。ザ・フーはいつだってロックの核心をついて、ロックを革新する、確信犯なのだ。
Kinks – Sunny Afternoon
ソングライティングで急激な成長を遂げたのはこのキンクスのレイ・デイヴィスにも言えるだろう。彼は一度聴いただけで耳に残る、フックのある歌メロで、哀愁漂う極上の名曲を書いた。レノン&マッカートニーも、ジャガー&リチャーズも、歌からにじみ出る「哀愁」だけはレイ・デイヴィスに敵わないだろう。これはその代表曲だ。
The Byrds – Eight Miles High
ジーン・クラーク、ロジャー・マッギン、デヴィッド・クロスビーの共作によるこの曲は、史上初のサイケデリック・ロックとされている。
複雑なビート、崩れかかった調性、不穏な緊張感、異様で謎めいた歌詞など、サイケデリック・ロックは、ロックに新たな次元をもたらした。
The Lovin’ Spoonful – Summer in the City
ラヴィン・スプフーンフルは前年にデビューしたニューヨークのバンドだ。フォークやブルース、ジャズなどのルーツ・ミュージックを基調としたフォーク・ロックで、〈グッドタイム・ミュージック〉と評された。この曲は彼らにとって初の全米1位を獲得した代表曲だ。
Buffalo Springfield – For What It’s Worth
彼らの1stアルバムからのシングルで、スティーヴン・スティルスの作。全米7位のヒットとなり、彼らの出世作となった。
フォーク・ロックからさらに発展し、カントリー風味もあり、サイケデリック的でもあるという、エポック・メイキングかつオリジナリティ溢れる傑作だ。
Love – Seven & Seven Is
カリフォルニアで結成された黒人白人混成バンド、ラヴの2ndアルバム『ダ・カーポ』からのシングル。
フォーク・ロック~サイケデリック系のバンドだが、この曲からはガレージ・ロック的なパワフルでエネルギッシュなカッコ良さとオリジナリティを感じる。
Ike & Tina Turner – River Deep Mountain High
“ウォール・オブ・サウンド”の使い手として有名な天才プロデューサー、フィル・スペクターの最高傑作と名高い同名のアルバムからのシングル。スペクターらしい、深いエコーに包まれた奥行きのある変態的なサウンドが凄い。
ティナ・ターナーのヴォーカルに惚れこんだスペクターが、暴力夫として名高いアイクには金だけ払って参加はさせずに作り上げたアルバムで、スペクターの最高傑作と評されることも多い。
シングルはアメリカでは88位と不調だったが、イギリスでは3位と高い評価と支持を得た。
The Beach Boys – Good Vibrations
ブライアン・ウィルソンが創り上げた徹底して変態的でありながらも史上最も美しいロック・アルバムであり、史上初のコンセプト・アルバムとなった『ペット・サウンズ』は、ロック界に激震を起こした。このアルバムに影響を受け、ビートルズやキンクスをはじめ、猫も杓子もコンセプト・アルバムの制作に取り掛かったのだ。
この曲は『ペット・サウンズ』制作時に録音したものだがブライアン・ウィルソンの意向で収録されず、およそ半年後にシングルとしてリリースされ、全米・全英ともに1位を獲得する大ヒットとなった。ビーチ・ボーイズの最高傑作だ。
The Beatles – Tomorrow Never Knows
イギリスで最初に生まれた本格的な変態サイケデリック・ソングは、ジョン・レノンが中心となって制作したこの曲だろう。テープを逆回転させたり、ヴォーカルをはじめ様々な楽器の音を加工したり、当時の最新の機器とスタジオ技術を駆使して創り上げられた作品だ。
前衛音楽のような奇怪な響きを持ちながらも、推進力のあるビートとクールな歌メロ、そして同じフレーズが唐突ながら繰り返されることで、ちゃんとカッコいいロック・ミュージックとして成立している、完成度の高い作品である。
選んだ10曲がぶっ続けで聴けるYouTubeのプレイリストを作成しましたので、ご利用ください。
♪YouTubeプレイリスト⇒ ヒストリー・オブ・ロック 1966【ロックの多様化と変態化】Greatest 10 Songs
ぜひお楽しみください。
(by goro)