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Eric Clapton
“461 Ocean Boulevard” (1974)
デレク&ザ・ドミノスの『いとしのレイラ』以来、実に4年ぶりとなったエリック・クラプトンのスタジオ・アルバムである。
その空白の4年のうち3年は、ヘロイン中毒でフニャフニャだったらしい。
25歳から28歳という、人生において心技体が最も充実している時期でもある。彼ほどの知名度なら、ステージに立つだけでガッポガッポとお金が稼げたはずだ。
そして3年経ってようやく「人生を無駄にしている」と気づいたという。
若くして大スターになったギターの天才だけれども、それを除けば彼もただの未熟な若者だったということだ。もしそれに気づかなければ、彼もまた、27歳ぐらいで死んでいたのかもしれない。
一念発起して近所の農場の手伝いを始め、新しい音楽や古いブルースのレコードをあらためて聴き漁り、再び演奏を始め、曲を書き始め、1年かけてヘロイン中毒を克服した。
1973年1月にザ・フーのピート・タウンゼントの企画「レインボウ・コンサート」で復活を遂げると、デレク&ザ・ドミノスのベーシストだったカール・ラドルらの協力を得て、本作のレコーディングに臨んだ。
本作は1974年7月にリリースされ、全米1位、全英3位の大ヒットとなった。
クラプトンのオリジナル曲は3曲で、カッコ内はカバー元のアーティストだ。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 マザーレス・チルドレン(トラディショナル)
2 ギヴ・ミー・ストレンクス
3 ウィリー・アンド・ザ・ハンド・ジャイヴ(ジョニー・オーティス)
4 ゲット・レディ
5 アイ・ショット・ザ・シェリフ(ボブ・マーリー)
SIDE B
1 アイ・キャント・ホールド・アウト(エルモア・ジェイムズ)
2 プリーズ・ビー・ウィズ・ミー(スコット・ボイヤー)
3 レット・イット・グロウ
4 ステディ・ローリン・マン(ロバート・ジョンソン)
5 メインライン・フロリダ(ジョージ・テリー)
B5はギタリストとしてレコーディングに参加したジョージ・テリーの作だ。
そしてA5「アイ・ショット・ザ・シェリフ」は、当時ボブ・マーリーを熱心に聴いていたそのジョージ・テリーが「この曲をカバーすべきだ。必ず大ヒットする」とクラプトンを説得し、アルバムに収録させたという。テリーの目論見は的中し、全米1位、全英9位の世界的ヒットとなった。クラプトンの全米1位シングルはこれが唯一である。
「アイ・ショット・ザ・シェリフ」のクラプトン版はゴリッゴリのレゲエではなく、ロック調にすっきりとアレンジされている。後年、クラプトンとボブ・マーリーが対面を果たした際、マーリーはこのカバーを気に入っていると語ったそうだ。
クラプトンが60年代に在籍したバンド、クリームがわたしは実は苦手で、あまり好きになれなかったのだけれども、本作は明るくカラッとしたサウンドが好ましく、クラプトンのギターも絶好調の時みたいに弾き散らかさない感じがいい。楽曲もバラエティに富んでいて楽しめる。
ちなみにこのアルバムのタイトル『461 オーシャン・ブールヴァード』は、当時クラプトンが住んでいた自宅の住所なのだそうな。ジャケに映っている家がそうなのだろう。
アルバムを発表すると同時に、ファンがこの家に押し寄せてどえらいことになったそうだ。
そりゃそうだろうな。
↓ 全米1位の大ヒットとなった、ボブ・マーリーのカバー「アイ・ショット・ザ・シェリフ」。この大ヒットのおかげで、レゲエが世界中で認知されたと言っても過言ではないだろう。わたしも17歳のときにこの曲で、レゲエとボブ・マーリーを初めて知った。
↓ クラプトン作のメロディアスな名曲「レット・イット・グロウ」はレッド・ツェッペリンの「天国への階段」を手本にしているのだそうだ。
(Goro)