Bob Dylan “At Budokan”
ディランの初来日公演となった、1978年2月28日と3月1日の武道館公演を収録したライヴ・アルバムだ。
バックバンドは『ストリート・リーガル』のメンバーに近く、サックスや女性コーラスなども入った11人編成という大所帯のバンドだ。
4年前の素晴らしいライヴアルバム『偉大なる復活』とどうしても比べてしまうが、やっぱりそれと比べるとなんとなく冴えない印象なのである。
選曲は人気曲満載で悪くないのだけれど、なんとなくイントロもテキトーにフワッと始まる印象の曲が多かったり、オープニングの「ミスター・タンブリンマン」から、おや?時差ボケかなと思うぐらいお疲れの印象なのだ。
ディランのライヴと言えば大胆なアレンジの変更や、ときにはメロディやコードも大きく変えてしまうので、サビが来るまでなんの曲なのかさっぱりわからない、というのが逆に楽しみでもあるのだけれど、それはこのライヴでも存分にやってくれている。
でも「おおっ!」というよりは「ええっ!?」とか「はい?」とかいうアレンジが多いのも事実なのだ。
「くよくよするなよ」のレゲエ・アレンジは「ええっ!?」という感じだし、それに続く「マギーズ・ファーム」のドナ・サマーみたいなディスコ風のアレンジはもう驚きを通り越して大笑いだ。
なんというか、全体にエンターテインメントが過ぎるアレンジのように聴こえる。
やりすぎというか。余計なものを入れ過ぎというか。
そういうディランにあまり慣れてないので戸惑ってしまうのだ。
もちろん悪くないアレンジのものもあるし、後半に進むにつれディランもやる気を見せてきたりもするので、まあディラン好きが集まって、呑みながら酒の肴として聴くにはもってこいのアルバムだとは思う。
このアルバムは当初、日本のみでの発売だったが、当然のことながら世界中のディラン・ファンたちは血眼になってこれを手に入れようとするわけで、世界中に輸出され、翌年にはアメリカでも正式に発売される運びとなった。
日本では1978年の8月に発売されたが、その2か月後にはチープ・トリックの『at 武道館』が発売されている。
この2枚によって「BUDOKAN」の名が世界中のロックファンたちにに知られることとなった。
↓ 「ラブ・マイナス・ゼロ/ノー・リミット(Love Minus Zero/No Limit)」 。
↓ 「いつまでも若く(Forever Young)」