Bob Dylan “Blood on the Tracks”
アサイラムから出した『プラネット・ウェイヴズ』の売り上げに不満を持ったという33歳のディランは、このアルバムでまた古巣のコロムビアに復帰した。コロムビアも破格の条件で迎えたという。
そして本作は全米1位、全英4位、200万枚を超える大ヒットとなり、ディランの全アルバムの中でも最も売れたもののひとつとなっている。
このアルバムでのディランの作詞に関する成長を激賞する評論家も多いようだが、そこは残念ながらわたしはわからない。
しかしこれまでなかったほどクリアなサウンドが聴きやすいアルバムだ。
1曲目の「ブルーにこんがらがって」のイントロのアコギの音は思わず「おぉっ」となるほど、すごくキレイに響いている。ディランの喉の調子も良さそうだ。
全体的には原点に還った甘さ控えめの「真面目なディラン」といった感じの作品だが、完成度が高く、このアルバムを70年代のディランの最高傑作に挙げる人も多い。
わたしもこれはCDで持っていてよく聴いた。駄曲も変なアレンジもない、まあちょっと長く感じる曲が多いが、聴き応えのあるアルバムだ。でもわたしにとっての70年代ディランの最高作はこれではないけれども。
ジャケットはディランの横顔の写真を絵画風に加工したものだ。
加工しているとはいえ、久々に本人の写真のジャケではある。
なんとなく、目をそらして恥ずかしそうに小声で「ただいま帰ってまいりました」と言ってるような感じにも見える。
↓ 「ブルーにこんがらがって(Tangled Up in Blue )」
↓ 「愚かな風(Idiot Wind)」