Bob Dylan
“Bringing It All Back Home” (1965)
1965年3月にリリースされたボブ・ディランの5枚目のアルバムだ。
とりあえずA面だけとはいえ、ディランがバックバンドをつけ、フォークからロックへと転身した記念すべきアルバムだ。全米6位、全英1位と、過去最高位を記録する大ヒットとなった。このときディラン、23歳である。
この転身が「商業主義に魂を売った」と、フォーク原理主義者みたいなファンたちから猛批判を浴びたのは有名な話だ。
当時のライヴではまだPAの性能が追いつかず、バンドと演奏するとディランの歌が聴こえなくなってしまったということもあり、盛大なブーイングにディランが涙目で退場するという場面もあった。
それにしても、ディランのファンと言いながら、プロテスト・ソングを歌わなくなれば批判し、バンドをつければ批判し、後にはカントリーを歌っても批判した頭の固い原理主義者たち。面倒くさい連中はいつの時代でも、どこにでもいるものだ。
いったいディランのなにを聴いていたのかと思う。
ディランは「時代は変わる」と歌ったではないか。
変化を拒み、新たな表現に挑戦することを憎むなんて、とてもディランの歌を理解していたとは思えない。
アルバムは、オリジナルLPのA面がバンド付きのロック・サイド、B面がアコースティック・サイドとなっている。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 サブタレニアン・ホームシック・ブルース
2 シー・ビロングズ・トゥ・ミー
3 マギーズ・ファーム
4 ラヴ・マイナス・ゼロ/ノー・リミット
5 アウトロー・ブルース
6 オン・ザ・ロード・アゲイン
7 ボブ・ディランの115番目の夢
SIDE B
1 ミスター・タンブリン・マン
2 エデンの門
3 イッツ・オールライト・マ
4 イッツ・オール・オーバー・ナウ、ベイビー・ブルー
チャック・ベリーの「トゥー・マッチ・モンキー・ビジネス」のリフを使ったというオープニングのA1「サブタレニアン・ホームシック・ブルース」は全米39位と、ディランにとって初のTOP40入りとなるヒット曲だった。ロックンロールのようでもあればトーキング・ブルースのようでもあり、今思えばラップのようでもある、とにかく画期的な曲だった。そしてこのカッコいいミュージックビデオは、ロック史上初のミュージックビデオと言われている。
本作中最も有名なB1「ミスター・タンブリンマン」は、ディランの代表曲のひとつだ。そして本作が発表されてからわずか3週間後にザ・バーズがデビュー・シングルとしてカバーし、全米1位になった。
本作でわたしが最も好きなのはA4「ラヴ・マイナス・ゼロ/ノー・リミット」だが、他にも、A3「マギーズ・ファーム」、B4「イッツ・オール・オーバー・ナウ、ベイビー・ブルー」など名曲が並ぶ、充実したアルバムだ。本作からの3作ぐらいがディランの第1期黄金時代と言えるだろう。
ちなみに、ジャケットに写っている赤いドレスの美人は、ディランがまた新たな恋人を自慢げに披露しているのではなくて、当時のディランのマネージャーの奥様なのだそうな。
↓ 史上初のミュージック・ビデオと言われる「サブタレニアン・ホームシック・ブルース」のMV。
↓ バーズのカバーで大ヒットした「ミスター・タンブリン・マン」のオリジナル。
(Goro)