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Alice Cooper
“Killer” (1971)
アリス・クーパーはアメリカン・ハード・ロックの先人のひとりであり、またグラム・ロックのハシりでもあり、いわゆるショック・ロックを確立した人だ。
たぶんロック史上初めて、彼は奇抜なメイクをして、ステージで人形を使って絞首刑やギロチン刑の真似事をして良識ある人々から顰蹙を買った、マリリン・マンソンやスリップノットらの大先輩だ。
しかしアリス・クーパーにはおどろおどろしさだけでない、ポップな要素やユーモアもある。
ホラー映画にたとえて言えば、『エクソシスト』のようなシリアスな作品ではなく、『スクリーム』のような、学園コメディの空気感もあるような、ポップなホラー映画の方に近いと思う。
英・米のグラム・ロックの先駆者である両雄、デヴィッド・ボウイはSFという設定のエンタテインメントだったが、アリス・クーパーはホラーという設定のエンタテインメントだった。
しかし、そのオリジナリティや影響力にもかかわらず、アリス・クーパーは過小評価されすぎではないかと、ときどき思うことがある。エアロスミスもキッスもスリップノットも良いけど、みんな、アリス・クーパーを忘れてやしないか? とわたしはときどき言いたくなるのである。
本作はアリス・クーパーの4枚目のアルバムで、1971年11月にリリースされた。ちなみにアリス・クーパーとはヴォーカリストの名前だが、同時にバンド名でもある。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 俺の回転花火
2 ビー・マイ・ラヴァー
3 ヘイロー・オブ・フライ
4 無法者
SIDE B
1 勇気づけて
2 イエー・イエー・イエー
3 デッド・ベイビーズ
4 キラー
なんと言ってもA1「俺の回転花火」がカッコいい。当時、ステージで毎回絞首刑にされていた頃のアリス・クーパー初期の名曲だ。
「口うるさい彼女を車で轢き殺してやりたい」と歌うアブない歌である。
邦題の「回転花火」はなんなのかよくわからないが、この曲をユーモアと共に広めるのには大いに役立っただろう。だから許す。
A2「ビー・マイ・ラヴァー」もシングル・カットされ、全米49位まで上昇した。児童虐待反対を訴えるB3「デッド・ベイビーズ」も好きな曲だ。A4「無法者」はこの年に死去した友人、ジム・モリソンについて歌ったとアリス・クーパーがラジオで語ったそうだ。
アルバムも全米21位、全英27位と健闘した。
まだグラム・ロックという概念も言葉もなかった時代なので、彼らのデビュー当時、日本では「病めるアメリカ、5人組のホモ・グループ登場!」などと紹介されたらしい。
ひどい話だ。
彼らは、すでに大人へと成長していたロックリスナーたちからは顰蹙を買ったが、新しい世代のロック・キッズたちから絶大な支持を得た。
当時15歳だった、P.I.L.のジョン・ライドンもそのひとりだった。
彼は本作を「史上最高のロック・アルバム」と評した。
↓ 邦題も最高な代表曲「俺の回転花火」。なんてカッコいい曲だろう。
↓ シングル・カットされ、全米49位まで上昇した「ビー・マイ・ラヴァー」。
(Goro)