⭐️⭐️⭐️
The Animals
“Animal Tracks” (1965)
英ニューカッスル出身のバンド、アニマルズが1965年5月にイギリスでリリースした2ndアルバムだ。全英6位のヒットとなった。
ビートルズ、ストーンズ、フー、キンクスと共に「5大ブリティッシュ・ビート・バンド」と評されたアニマルズは、当時はイギリスのみならずアメリカや他のヨーロッパ諸国、そして日本でもヒットチャートを賑わせる存在だった。
しかし現在では、上記の4つのバンドたちとの知名度や人気の差は大きく、現在ではアニマルズを外した「4大ブリティッシュ・ビート・バンド」という括り方のほうが普通になっている。
それは4大バンドにはロック好きなら誰もが知る「名盤」が複数あるが、アニマルズにはそういったアルバムが一枚もないことでも明らかだ。
本作『アニマル・トラックス』も、現在のロックリスナーにはほとんど知られていないはずだ。
その原因はアニマルズが、ロック史に残るようなオリジナル曲を残せなかったという点に尽きるだろう。
ブリティッシュ・ビートも初期の頃は、アメリカのR&Bやブルース、ロックンロールのカバーが主流であり、それだけで充分に評価され、人気を得られたものだった。
しかしこの65年あたりを境にしてカバーよりもオリジナル曲が求められる時代になり、ソングライターのいないアニマルズはその制作を外部に頼らざるを得なかった。
ロックが単にカバーの腕前を競ったり、ヒットだけが目的の音楽ではなく、「新しい世代の若者がその価値観や思いを自分たちで歌にすること」にその意義が変わったとき、アニマルズはライバルたちに遅れをとり、急速に失速することになったのだ。
本作もオリジナル曲はエリック・バードンが書いたB4の1曲のみで、あとはすべてカバーである。カッコ内はカバー元のアーティスト。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 メス・アラウンド (レイ・チャールズ)
2 ハウ・ユーヴ・チェンジド (チャック・ベリー)
3 ハレルヤ・アイ・ラヴ・ハー・ソー (レイ・チャールズ)
4 アイ・ビリーヴ・トゥ・マイ・ソウル (レイ・チャールズ)
5 ワーリード・ライフ・ブルーズ (ビッグ・メイシオ)
6 ロバータ (ヒューイ・ピアノ・スミス)
SIDE B
1 アイ・エイント・ガット・ユー (ジミー・リード)
2 ブライト・ライツ・ビッグ・シティ (ジミー・リード)
3 レット・ザ・グット・タイムズ・ロール (シャーリー&リー)
4 フォー・ミス・コウカー
5 ロードランナー (ボ・ディドリー)
当時のイギリスの慣例で、アルバムにはシングル曲が収録されていないので、曲目だけを見ると地味な印象かもしれないが、しかし聴けばわかるが、どれもこれも素晴らしく出来の良いカバーなのである。
ヴォーカリストのエリック・バードンは、R&Bを歌わせたら彼の右に出る者はいなかったし、ヒルトン・バレンタインのギターも惚れ惚れするほどカッコいい。
さらにセンスも腕も良いアラン・プライスというキーボードがいるのがまた大きな強みであり、キレと迫力のある演奏ができる、実力の点ではピカイチのバンドだったのだ。
上手さだけで言えば、ストーンズも敵わない。
ただ、残念ながらオリジナル曲が書けなかっただけなのだ。
この次の3rd『アニマリズム』はオリジナル曲を増やし、高評価を得たけれども、わたしはやはり良くも悪くも彼らの本領はカバーだと思うし、ベタな選曲多めの本作のほうがより本領を発揮しているように思う。わたしはアニマルズはこのアルバムが一番好きだ。
5大ブリティッシュ・ビート・バンドの中でも、R&Bのカバーの腕前だけで言えばアニマルズは一番だったと思う。
その後アニマルズは生き残りをかけ、オリジナリティを打ち出そうと、拠点をサンフランシスコに移してサイケデリック・ロックにもチャレンジしたけれども大きな成功は得られず、1968年には解散してしまう。
↓ ジミー・リードのカバー「アイ・エイント・ガット・ユー」。
↓ ボ・ディドリーのカバー「ロードランナー」。
(Goro)