2003
世界各地で爆弾テロが多発し、米英が協力してイラクを攻撃したこの年、アメリカやオーストラリア、北欧あたりから出てくる新世代のガレージ・ロック・バンドに夢中になっていたのは本国のリスナーではなく、イギリスの若者たちだった。
アメリカでは相変わらずヘヴィ・ロック(ラウド・ロック)やポップ・パンクが幅を利かせ、ビッグ・セールスを記録していたが、ホワイト・ストライプスがチャートの上位に顔を出すなど、少しずつ変わりつつあった。
イギリスと違って国土の広いアメリカでは、流行にまったく関係のないスタイルのロックも何食わぬ顔で生まれてくるのも、すでに20世紀に1周回った後でなんでもありとなった21世紀のロック・シーンを楽しいものにしつつあった。
つかみどころはないけれども、確実にロック・シーンに活気が生まれている、そんな2003年の10組10曲です。
The White Stripes – Seven Nation Army
ホワイト・ストライプスの4thアルバム『エレファント』からのシングルとなったこの曲は、00年代のガレージ・ロック・リヴァイヴァルで最も有名になったアンセムと言って過言ではないだろう。
イギリスでの圧倒的な支持に比べると、本国アメリカではヘヴィ・ロックが未だに幅を利かせて苦戦していたが、それでもアルバムは全米6位、全英1位と、大躍進を果たした。
Jet – Are You Gonna Be My Girl
前年のザ・ヴァインズに続いてオーストラリアから世界へと飛び出したジェットは、デビュー・アルバム『ゲット・ボーン』が世界で350万枚という大ヒットを記録した。
この曲はもうエルヴィスの時代からあるような、シンプル極まりないロケンロールだ。彼らもまたガレージ・ロック・リヴァイヴァルを盛り上げたバンドだった。どれだけ時代が変わってもこういう古典的なロケンロールが愛されるのがうれしかったな。
The All-American Rejects – Swing, Swing
米オクラホマ州出身のいかにも田舎の気のいい兄ちゃんたち、オール・アメリカン・リジェクツは、21世紀のパワー・ポップ・バンドだ。パワー・ポップはわたしの大好物である。
わたしはポップ・パンクにはピクリともしないが、パワー・ポップには一瞬にして飛びついてしまうのだ。似ているようだけど全然違うのは、パワー・ポップにあってポップ・パンクに無いのが、クソダサい言葉で言うと「歌心」とでもいうやつなんだろうな。
Kings Of Leon – Molly’s Chambers
米テキサス州ナッシュヴィル出身のキングス・オブ・レオンは、「南部のストロークス」などとも呼ばれた、21世紀のサザン・ロックバンドた。
見た目こそまるでC.C.R.みたいだが、ガレージ・ロック・リヴァイヴァルに呼応するような、クールな音楽性はやはり21世紀世代だ。
ボブ・ディランやポール・ウェラー、ノエル・ギャラガーなどからも高く評価された。
My Morning Jacket – One Big Holiday
マイ・モーニング・ジャケットはケンタッキー州出身と、アメリカのディープな田舎からのバンドが続くが、やっぱりアメリカは広いので、流行なんか知ったこっちゃないぜというバンドがあちこちにいるものだ。イギリスだとすぐなんとかムーヴメント一色になってしまうのでこうはいかない。
わたしが彼らを知ったのはニール・ヤングが絶賛していたからだが、いかにもそんなバンドだ。フー・ファイターズの前座も務めているが、いかにもそんなバンドだ。
この曲も豪快だがメロディアスで歌心もあって、好感が持てる。
Evanescence – Bring Me To Life
米アーカンソー州出身でゴシック・メタルなどとも呼ばれたエヴァネッセンスだが、途中でラップが入ったりするところなどから、当時の米国ロックの商業的な意味での主流となっていたラウド・ロック(ヘヴィ・ロック)の女子ヴォーカル版と言えるだろう。
この曲は1stアルバム『フォールン』からのシングルで、映画『デアデビル』の主題歌にも使用されたこともあり、わたしにはなにがいいのかよくわからないけれども全米5位、全英1位の世界的ヒットとなった。
アルバムも全米3位、全英1位、1,500万枚を超すメガヒットとなった。
The Rapture – House Of Jealous Lovers
ニューヨークのバンド、ザ・ラプチャーは硬質で鋭利なギターとシンセ、そしてダンスビートを組み合わせた新しいサウンドで、注目を集めた。
彼らのスタイルは“ポスト・パンク・リヴァイヴァル”と呼ばれ、ロック・シーンにまた新たな潮流を生み出した。
Yeah Yeah Yeahs – Maps
ニューヨーク出身の彼らはやはりいかにもニューヨークらしい、アート風で、インテリ風で、クールな音楽性のベースレス・トリオである。
彼らもまたガレージ・ロック・リヴァイヴァルの括りに加えられ、ストロークスやホワイト・ストライプスの前座などを務めながら、ぐんぐんと知名度と人気を得ていった。
The Darkness – I Believe In A Thing Called Love
70年代ハード・ロックへの愛が止まらないイギリスのバンド、ザ・ダークネスの1stアルバム『パーミッション・トゥ・ランド』からのシングルで、全米2位、アルバムも全米1位を記録する大ヒットとなった。
キャッチーでカッコよくてユーモアあふれるハード・ロックという意味では、「スメルズ・ライク・ティーンスピリット」以来の名曲と絶賛したい。
Muse – Hysteria
イギリスのバンド、ミューズは3rdアルバム『アブソリューション』で彼らにとって初の全英1位を獲得し、天下を獲った。
今にも死にそうなヴォーカルと過剰なほどの轟音サウンドは、一聴してレディオヘッド・チルドレンだろうと思わせるものだ。それにしても、もう世代交代か。早いな。
この後、彼らは英国を代表するバンドとして、バケモノのように売れていく。
選んだ10曲がぶっ続けで聴けるYouTubeのプレイリストを作成しましたので、ご利用ください。
♪YouTubeプレイリスト⇒ ヒストリー・オブ・ロック 2003【流行のロックと流行無視のロック】Greatest 10 Songs
ぜひお楽しみください。
(by goro)