⭐️⭐️⭐️⭐️
Van Morrison
“Astral Weeks” (1968)
初めて本作を聴いたときは、そのあまりの独創性に理解が追いつかなかった。
「なにこれ!?」と思った。
「どういうこと!?」と思ったものだ。
わたしが知っているロックやポップスとはずいぶん違うものだった。
ジャズの要素もあれば、フォーク・ロック、R&B、カントリーなど様々な要素はあるけれども、しかし決してそのどれにも当てはまらない、ロック史上にも滅多に見られないほど、真の意味で前衛的で、唯一無二の音楽だ。
正直とっきにくいし、難解ではあるけれども、繰り返し聴くうちに、その異様な美しさ、奥深さは、まるで宇宙の深淵を覗くような途方もないスケールを秘めた音楽だということに気がつく。
北アイルランドのベルファスト出身、23歳のヴァン・モリソンがジャズ系のミュージシャンたちを集めてたったの2日間で録音したという驚くべき傑作『アストラル・ウィークス』は、1968年11月にリリースされた。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 アストラル・ウィークス
2 ビサイド・ユー
3 スウィート・シング
4 サイプラス・アヴェニュー
SIDE B
1 ヤング・ラヴァーズ・ドゥ
2 マダム・ジョージ
3 バレリーナ
4 スリム・スロー・スライダー
ふつうのポップソングのようなヴァースとコーラスの繰り返しも無いし、口づさめるような歌メロもない。フレーズを繰り返し変化させながら盛り上がっていく伴奏に乗せて、意識の流れそのままのように詩的な歌詞を即興的に歌う、そんな印象の曲が多い。
歌とバンド、そしてストリングスや管楽器、ヴィヴラフォンやハープシコードが愉悦するように響き合い、いつのまにかロックを聴いているというよりはクラシックのシンフォニーでも聴いているような、音空間にどっぷりと浸りながら、じわじわと襲ってくる感動に魂が震える。
本作は発売当初1万5千枚しか売れなかったという。しかしこの類を見ない孤高の作品の評価は時代を超えて高まってゆき、50年の歳月を経て50万枚を売り上げた。
↓ オープニングを飾るタイトル曲。全体がひとつのクレッシェンドのように、後半に向かうにつれ霧が晴れて光が射してくるように、ストリングスが躍るように盛り上げていく。
↓ 歌詞の意味がわかるわけでもないのに、聴き終えるといつも1本の映画を観たような感動に襲われる「マダム・ジョージ」。
(Goro)