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Eagles
“One of These Nights” (1975)
バンドも長く続けていると、どこかで変わらなければならない時が来るんだなあ、とあらためて思う。
ずっと同じスタイルで続けるバンドもあるけれども、セールスが頭打ちになってきたり、時代の流れに取り残されていると感じたりすると、音楽性を変えてみようとするものだ。
それが吉と出る場合もあれば、凶と出る場合もある。
イーグルスは本作でそれをやって、大吉が出た。
本作はイーグルスの4枚目のアルバムとして1975年6月にリリースされ、彼らにとって初となる全米1位、全英8位を獲得し、400万枚を超える大ヒットとなった。
日本でもオリコン28位と初めてチャート入りを果たした。本作によって彼らは、アメリカの人気バンドから、世界的な人気バンドへとブレイクしたのだ。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 呪われた夜
2 トゥー・メニー・ハンズ
3 ハリウッド・ワルツ
4 魔術師の旅
SIDE B
1 いつわりの瞳
2 テイク・イット・トゥ・ザ・リミット
3 ヴィジョンズ
4 アフター・ザ・スリル・イズ・ゴーン
5 安らぎによせて
1972年のデビュー以来、イーグルスはカントリー・ロックのスタイルを貫いてきたけれども、1970年代も後半へと突入したこの時期になると、それだけで生き残っていくのは難しいと感じたのだろう。
ハード・ロックやディスコ・ミュージックが音楽シーンのメインストリームとなっていった時代だった。当時、同居していたドン・ヘンリーとグレン・フライは、それらの音楽のエッセンスと時代の精神を、どうイーグルスに取り入れるかに頭を悩ませたという。
その結果、アルバムにはところどころでハード・ロックのようなギターが登場し、ディスコ・ビートを取り入れたA1「呪われた夜」は、全米1位の大ヒットとなった。
従来のカントリー・ロック路線のB1「いつわりの瞳」も全米2位の大ヒットとなり、グラミー賞の最優秀ポップ・ヴォーカル・パフォーマンス賞を受賞した。さらに、これも新境地だった美しいワルツのバラード、B2「テイク・イット・トゥ・ザ・リミット」も全米4位のヒットとなった。結果的に本作は、新路線と従来路線が混じった、音楽的な幅の豊かさが楽しめる傑作となった。
しかしこの大胆な路線変更は、バンド内の人間関係に波紋を広げた。
アルバムのラストを飾る美しい曲「安らぎによせて」を書き、リード・ヴォーカルも取ったギタリストのバーニー・レドンは、従来のカントリー・ロック路線から離れ、ロック色の濃いスタイルで、商業主義的にメイン・ストリーム路線へと移行しようするバンドに不満を募らせ、脱退することとなった。
また、この路線変更には、批評家やファンの間でも賛否が分かれたという。
わたしはもう、その時代の流行の音楽のエッセンスを取り入れるなんてことはローリング・ストーンズなどですっかり慣れっこになっているので特に驚きもしない。
ディスコを取り入れようがハード・ロックを取り入れようが何を取り入れようが、結果的に良い曲が出来上がればそれでいいのだと思う。
まあ、下手すれば諸刃の剣にもなりかねないのは確かなので、そこはずいぶんとセンスが問われるところだろうけれども。
↓ ディスコのエッセンスを取り入れた画期的な「呪われた夜」。全米1位の大ヒットとなった。
↓ 全米4位のヒットとなった美しいワルツ「テイク・イット・トゥ・ザ・リミット」。
(Goro)