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Big Brother & The Holding Company
“Cheap Thrills” (1968)
際立った存在感の個性的な女性ロック・ヴォーカルと言ったらやはりこの人を超える人はいないだろう。
ジャニス・ジョプリンだ。
度肝を抜くような激しさと、すすり泣くような哀しみとが同居した、感情を振り絞って歌われる、圧倒的な、焼けつくような、魂の歌声。その後彼女に似た人はひとりも出てこなかったし、一代限りのスタイルだった。
テキサス州出身のジャニス・ジョプリンは、サンフランシスコに移ると、フォーク・シンガーとして生計を立てていたが、ビッグ・ブラザー・アンド・ホールディング・カンパニーに出会い、ヴォーカリストとして加入し、1967年にレコード・デビューした。
本作は1968年8月にリリースされた彼らの2ndアルバムである。アナウンスと拍手のSEから始まるのでライヴ・アルバムと勘違いされることが多いが、スタジオ録音であり、最後の「ボール・アンド・チェイン」だけがライヴ録音だ。
しかし全編、ライヴのような迫力である。バンドのラフな演奏と気合の入り方、ジャニスの全身全霊を傾けた、奔放かつ熱い歌声によってそう聴こえるのだろう。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 ふたりだけで
2 愛する人が欲しい
3 サマータイム
4 心のカケラ
SIDE B
1 タートル・ブルース
2 オー、スウィート・マリー
3 ボールとチェーン
1stアルバムはまったく売れなかったが、本作は全米アルバムチャートの1位を8週間も維持する大ヒットとなり、100万枚近くを売り上げた。
シングルカットされたA4「心のカケラ」は全米12位のヒットとなり、ジャニスの代表曲として知られている。アーマ・フランクリンのカバーだが、わたしもジャニスでは最も好きな曲のひとつだ。
わたしは初めて聴いたときにA2「愛する人が欲しい」の、野生動物のような恐るべき歌声に度肝を抜かれたものだ。ガーシュウィン作のA3「サマータイム」はジャズスタンダードとして多くのカバーが存在するが、ジャニス版は衝撃的と言うべき名唱である。
彼女がこの世を去ってから、もう54年にもなる。
しかし現在でも、洋楽ロックに興味を覚えた若者がいつかジャニスにたどり着いたときに受けるそのインパクトは、われわれの頃となんら変わっていないだろうと思う。
↓ 全米12位のヒットとなった代表曲「心のカケラ」。
↓ 強烈なインパクトの名唱「サマータイム」。
(Goro)