1999
20世紀末のロック・シーンは、わたしにはやや閉塞感を感じるものだった。
ヘヴィ・ロック、ミクスチャー・ロック、ラップ・メタル、ヒップ・ホップ、ポップ・パンク、エモ、テクノ、アンビエント、ポスト・ロック、この時代に流行した数々の音楽のスタイルはわたしはどれもこれもイマイチ面白いと思えなかったのだ。わたしが30歳を過ぎたということもあるだろう。わたしはすでに33歳だった。新しい世代のアーティストたちがすでにわたしより年下になっていったということもあるだろう。若者たちの無邪気さやナイーヴさに共感できなくなりつつあったのかもしれない。
逆にわたしより一回りぐらい下の世代はこの時代のロックが最高だった、と言う人も多いにちがいない。好みは人それぞれだし、青春を過ごした時期によって思い入れのある時代が違うのは当然のことだ。きっと青春を過ごし終えたわたしにはこの世紀末ロック・シーンはあまり楽しめなかったのだろう。
なのでわたしはこの頃は、いわゆるJ-POP(ダサい言葉!)が面白いと思って主に聴いていたのだ。ちなみにわたしが好きな日本のポップスは、1970年代の歌謡曲と、90年代末から2000年代前半にかけてのJ-POPに集中している。なぜかそのあたりのサウンドや歌が好きなのだ。いろいろ思い入れもあるし。
それでも以下に選んだ10曲は、世紀末ロックの時代の中でもできるだけ良いもの、面白いと思うものを選んでみたつもりである。
Red Hot Chili Peppers – Californication
レッチリの7枚目のアルバム『カリフォルニケイション』のタイトル曲。アルバムは全米3位、全英5位の大ヒットとなった。
ギタリストのジョン・フルシアンテが7年ぶりに復帰したアルバムだ。わたしも、レッチリのギターはやっぱりフルシアンテがいい。
彼がいることで、レッチリは、マッチョなだけのヘヴィ・ミクスチャー・ロックにとどまらない、繊細でメロディアスで独創的なギター・ロックに成り得たのだ。
Rage Against The Machine – Guerrilla Radio
レイジの3枚目にして最後のオリジナル・アルバム『バトル・オブ・ロサンゼルス』からのシングル。米オルタナチャート6位と、過去最高位を記録し、アルバムも前作に続いて全米1位の大ヒットとなった。ここでもトム・モレロ博士の変態ギターの片鱗が窺える。
アルバムは1992年に起こったロス暴動をテーマにしている。
Incubus – Drive
カリフォルニア出身のインキュバスは、当初からロックとヒップホップを融合させた、ヘヴィめのミクスチャー・ロックでスタートしたが、やがて過剰なこけおどしを捨て、メロディ重視のシンプルなサウンドへと収束した。たぶん根が素直でやさしい若者たちだったのだろう。
この曲は彼ら独自の音楽性が確立された4thアルバム『モーニング・ヴュー』からの、ゆったりとしたグルーヴによるシングルで、全米9位の大ヒットとなった、彼らの代表曲。
The Flaming Lips – Race For The Prize
米オクラホマ州で結成され、80年代に自主レーベルからデビューしたフレーミング・リップスは、サイケ・ポップ風の実験的な作風が特徴のバンドだ。
彼らがロック・シーンで脚光を浴びたのはこの9枚目のアルバム『ザ・ソフト・ブレティン』辺りから。ギタリストが脱退したことで作風が変わり、ストリングスやキーボードを生かしてよりポップでメロディアスな音楽を指向し、これが見事にハマった。
Wilco – A Shot In The Arm
米イリノイ州の田舎町で結成されたオルタナ・カントリー・バンド、アンクル・テュペロが解散・分裂して生まれたバンド、ウィルコの4thアルバム『サマー・ティース』収録曲。
もはやカントリー要素はヴォーカルの衣装ぐらいしか残っておらず、独自の進化を遂げた、やけにポップでありながらも、スリリングかつ斬新なオルタナティヴ・ロックだ。
Limp Bizkit – Break Stuff
L.A.で結成されたラップ・メタルとも呼ばれるヘヴィ・ロック系のバンド、リンプ・ビズキットの2ndアルバム『シグニフィカント・アザー』からのシングルで、彼らの代表曲。
重量級ながらキレも良いヘヴィなサウンドで完成度を高めたこの2ndは全米1位と、彼らのブレイク作となった。
しかし当時はこのジャケだけでもう聴く気にはならんかったなあ。。
Skunk Anansie – Charlie Big Potato
イギリスのバンド、スカンク・アナンシーは、スキンヘッドの黒人女性シンガーとヘヴィなサウンドにデジタルもまぶした、いかにも恐ろし気だがどこかドリーミーでもある独特の個性を持ったバンドだ。
この曲は彼らの3rdにして最後のアルバムとなった『ポスト・オルガミック・チル』からのシングルで、全英17位となった。
The Cranberries – Just My Imagination
クランベリーズはどうにも過小評価されているような気がする。ドロレス・オリオーダンの唯一無比の歌声と彼らの素晴らしい名曲の数々は、もっと評価されるべきだとわたしは当時から思っていたし、今も思っている。
この曲は4枚目のアルバム『ベリー・ザ・ハチェット』からのシングル。アグレッシヴなドSキャラで歌うことも多いドロレスが、ここでは何気ない日常の幸福を謳歌するような、明るく優しい溌溂とした声で歌われる。わたしはこの声の美しさに当時ひどく感銘を受けたものだった。なんとも例えようのない幸福感を感じるのだ。アレンジも素晴らしい。
Travis – Writing To Reach You
スコットランド出身のトラヴィスは1stではオアシスの影響が濃い感じだったけれども、この2nd『ザ・マン・フー』はレディオヘッド寄りに路線変更した感じだ。人間、見極めのタイミングも大事なのだ。
詩情豊かで儚い、彼らの音楽性をうまく引き出し、アルバムは全英1位、200万枚のビッグヒットとなった。
Blur – Tender
6thアルバム『13』からのシングルは、一度聴いただけで口ずさみたくなるゴスペル風の曲で、また新たなブラーの一面を見せてくれた。ギターのグレアムが弱弱しい声で歌うパートがまたいい。
全英2位のヒットとなり、彼らの代表曲のひとつに加えられた。
選んだ10曲がぶっ続けで聴けるYouTubeのプレイリストを作成しましたので、ご利用ください。
♪YouTubeプレイリスト⇒ ヒストリー・オブ・ロック 1999【世紀末ロック】Greatest 10 Songs
(by goro)