Bob Dylan
Like a Rolling Stone (1965)
ザ・バーズの「ミスター・タンブリンマン」のバージョンのあまりの素晴らしい出来に衝撃を受けたディランが、負けちゃおれんと作ったと言われているのがこの曲だ。
バーズのタンブリンマンの6か月後、1965年7月にリリースされた。
その年の年末にディランはこう言った。「あの曲は俺の最高傑作だ」。
わたしも異論はない。アメリカン・ロック史上の最高傑作と言う人がいたとしても、さほど異論はない。
2021年の【ローリングストーン誌が選ぶ「歴代最高の500曲】では4位だったが、上位3曲がアレサ・フランクリン、パブリック・エナミー、サム・クックであることを考えると、ロック畑では1位であり、その下の「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」を抑えての1位であることにも異論はない。
わたしはこの曲を「真に独創的なアメリカン・ロックの誕生」だったと思っている。
しかしそれ以来、これを超える曲が60年間出ていないということかと考えると、ちょっと寂しい気持ちにはなるけれども。
曲ももちろん素晴らしいし、ディランの一世一代の歌唱も圧倒的だ。そしてこの曲のイメージを決定づけているアル・クーパーのハモンド・オルガンがまた最高だ。もしもこのオルガンがなければ、この曲の魅力は半減していただろう。
そして、「落ちぶれた上流の女め、ざまあみろ」的な歌詞もまた凄い。
当時としては「階級闘争」的な意味合いも含んでいたのかもしれないが、今の感覚では人の転落人生を嘲笑っているような歌詞なのだ。そんなポップソングは今の時代にはないだろう。
でも最後には「でもそれが本来の人間らしい生き方なんだよ、それでよかったじゃないか」とやさしく励ますようにも聞こえる。深い歌詞だ。
わたしの人生もまた、あっちへこっちへゴローゴローと転がり続けた人生だった。飛躍もあれば転落もあったが、大怪我だけはしないで済んだ。間違いだらけの人生のようにも思えるし、わたしにしては上出来のような気もする。満足とも言えないが、とりあえず健康である。
6分12秒というこの曲の長さは、それを考えるのにちょうどいい感じの長さだ。
↓ ローリング・ストーンズが1995年にリリースした『ストリップド』に収録したライヴ・バージョンでのカバー。
↓ ギタリストのミック・ロンソンがデヴィッド・ボウイと1988年に録音したバージョン。彼の死後、1994年にリリースされた『ヘヴン・アンド・ハル』に収録。過去記事はこちら。
(Goro)