ヒストリー・オブ・ロック 1984【世界的メガヒットの連発とバンド・エイド】

パープル・レイン

1984

この年米国では、ロサンゼルスオリンピックが開催されてカール・ルイスがトラックを疾走し、アップル社がマッキントッシュを発表し、グラミー賞ではマイケル・ジャクソンが8冠を独り占めした。

マイケルの『スリラー』はMTV時代に見事にハマり、世界的メガヒットとなったが、その後もMTVの影響なのか、好景気の影響なのか、またはシンセで飾りつけた80年代サウンドが大衆ウケしたのか、数千万枚というメガヒット・アルバムが続々と生まれ、新たなスーパースターたちが誕生した。

1982年に発売されたコンパクトディスクは、それまでのアナログレコードより音質が良く(と当時は言われていた)、埃や静電気によるノイズが無く、手軽に扱えるということで、画期的な新メディアとして注目が集まったが、当初はまだプレーヤーが十数万円と高価だった。
それがこの年、ソニーから5万円を切るプレーヤーが発売されたことで、一気にCDが普及することとなった。
また、大型ラジカセや携帯用音楽プレーヤーも広く普及し、良い音でより手軽に、そしてファッション的な感覚で音楽を聴く時代となったことなども音楽リスナーの裾野を広げ、世界的メガヒットの時代を作る土台となったのかもしれない。

第2次ブリティッシュ・インヴェイジョンに圧され気味だった米国もようやく盛り返し、ブルース・スプリングスティーンというスーパー・ヒーローが救世主となり、マドンナというスーパー・ガールがビッチな魅力を振りまき、プリンスというスーパー天才王子が創造した音楽が衆人の度肝を抜いた。

ちなみに中学を卒業して以来、転職を繰り返してあちこちをふらふらとさまよいながら、実家も飛び出したり戻って来たりを繰り返し、好景気ともオシャレ時代ともまったく縁がなく、完全に迷走していたわたしも18歳になり、この年の夏に映画館に就職し、やっと収入が安定する。映画館にはそれから10年間勤めた。

以下はそんな1984年に生まれた名曲や、世界的メガヒットや、世界的チャリティーや、怪物の産声を含む、10組10曲です。

ブルース・スプリングスティーン/ボーン・イン・ザ・U.S.A.
Bruce Springsteen – Born in the U.S.A. 

BORN IN THE U.S.A. [12 inch Analog]

この年にリリースされたアルバムで最も売れたのがこのアルバムだ。3,000万枚を超えるメガヒットとなった。

それまでの彼の音楽性から思い切った転向となったバリバリ80年代サウンドのアレンジは、賛否両論を巻き起こした。

わたしも彼の全アルバム中、いちばんダサくて安っぽいサウンドだと思うが、楽曲そのものの充実度は全アルバム中でも最高作だと思うので、もうどう評価していいのかよくわからなかったりする。

Bruce Springsteen – Born in the U.S.A. (Official Video)

マドンナ/ライク・ア・ヴァージン
Madonna – Like a Virgin

Like a Virgin-Vinyl Reissue [12 inch Analog]

そしてスプリングスティーンがこの年の米国男子の代表なら、米国女子の代表はこのマドンナだろう。この曲もまた、この年を象徴し、80年代を象徴し、マドンナのイメージを決定づけた6週連続全米1位の大ヒット曲だ。アルバムも2,100万枚を売り上げた。

ルックスも歌い方もいかにも安っぽいビッチ感が素晴らしく、大胆でユーモラスな歌詞が、この時代のチープな80年代サウンドにとても良く合っていた。

Madonna – Like A Virgin (Official Video)

プリンス&ザ・レヴォリューション/レッツ・ゴー・クレイジー
Prince & The Revolution – Let’s Go Crazy

パープル・レイン

シンセ・ポップ、ファンク、ダンス・ミュージック、そして激しいギター・ロックを融合させ、前衛とポップを完全に両立することに成功し、1,400万枚を売り上げた奇跡のロック・アルバム『パープル・レイン』のオープニング・トラックだ。

キラキラしたシンセ・サウンドに乗せて、凄まじく暴力的なプリンスのギター・ソロが聴ける超刺激的な代表曲。全米1位の大ヒットとなった。

Prince & The Revolution – Let's Go Crazy (Official Music Video)

ヴァン・ヘイレン/ジャンプ
Van Halen – Jump

1984 [12 inch Analog]

彼らの6枚目のアルバム『1984』からのシングルで、彼らにとって初の5週連続全米1位となった大ヒット曲だ。アルバムも1,000万枚以上を売り上げ、日本でもオリコン4位と世界的ヒットとなった。

この時代における最高のギタリストを擁するハード・ロック・バンドでありながら、シンセのリフレインを中心にしたポップなアレンジでヒットを狙った、まさにこの時代ならではと言えるだろう。

Van Halen – Jump (Official Music Video)

ブライアン・アダムス/ヘヴン
Bryan Adams – Heaven

レックレス

カナダ出身のシンガー・ソングライター、ブライアン・アダムスの4thアルバム『レックレス(Reckless)』は、1,200万枚を超えるメガ・セールスとなり、本国カナダでは史上初めて100万枚を突破したアルバムとなった。

アルバムから6曲ものシングル・カットがされたが、この曲は初の全米1位となった、80年代サウンドの王道バラードだ。

Bryan Adams – Heaven

ザ・スタイル・カウンシル/ユーアー・ザ・ベスト・シング
The Style Council – You’re the Best Thing

カフェ・ブリュ

ザ・ジャムを解散したポール・ウェラーが、キーボーディストのミック・タルボットと組んだユニット、スタイル・カウンシルの1st『カフェ・ブリュ』は、R&B、ソウル、ジャズ、ゴスペル、ボサノヴァ、フレンチ・ポップスなど、幅広く豊かな音楽性が見事に調和し、美しい名曲に彩られた名盤だった。

ロック史上最もお洒落な名盤と言っても過言ではないほどで、若い頃はちょっと高級ブティックみたいな近寄り難さがあったが、今はわたしも年を取って洗練され、ダンディになったので、これぐらいお洒落でもちょうど良いぐらいだ。

この曲はアルバムからのシングルで、全英5位のヒットとなった。

The Style Council – You're The Best Thing (Official Video)

デペッシュ・モード/ピープル・アー・ピープル
Depeche Mode – People Are People

SOME GREAT REWARD [12 inch Analog]

英国のニュー・ウェイヴ勢の中でもなんとなく見た目がカワイらしいので、デペッシュ・モードもこの当時はアイドル扱いされていたのだ。

しかしこの曲のようにシンセ・ホップに金属音を取り入れた挑発的で実験的なサウンドと作風は、インダストリアル・ロックの先駆けのようでもある。

社会派的な過激な内容の歌詞も多く、この曲は人種差別と暴力について歌われている。全英4位、全米13位と過去最高のヒットとなった。

Depeche Mode – People Are People (Remastered)

コクトー・ツインズ/ローレライ
Cocteau Twins – Lorelei

TREASURE [12 inch Analog]

英インディ・シーンの黎明期を牽引したレーベルのひとつ、4ADからデビューした、スコットランド出身のバンド。女性ヴォーカルのエリザベス・フレイザーを中心に、ギターとベースの3人編成で、ドラムはドラムマシンを使用している。この曲は彼らの代表作『トレジャー – 神々が愛した女たち(Treasure)』の収録曲だ。

茫漠とした独特の浮遊感を持つノイジーなサウンドと、なにを歌ってるのかわからない幻想的な作風は英インディ・シーンにひとつのジャンルを作ったとも言える。「コクトー・ツインズ風の…」という表現はよく使われたものだ。後のシューゲイザー一派に与えた影響は大。

Cocteau Twins – Lorelei –

ザ・ジーザス&メリー・チェイン/アップサイド・ダウン
Jesus And Mary Chain – Upside Down

The Jesus And Mary Chain - Upside Down | Releases | Discogs

この英国の兄弟ユニットによる衝撃のデビュー・シングルは、耳をつんざくようなギターのフィードバック・ノイズの洪水の中で、ヴォーカルはまったくなにを歌ってるのかわからないが、どことなくポップでもある混沌が超クールだった。

またしてもロックの地下室に生まれた突然変異の怪物だったが、これが結果的にその後の90年代英米ロックの方向性を決定付ける最重要シングルとなった。

Jesus And Mary Chain Upside Down

バンド・エイド/ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス
Band Aid – Do They Know It’s Christmas?

Do They Know It's Christmas? [7 inch Analog]

そしてこの年の暮、ブームタウン・ラッツのボブ・ゲルドフを発起人として、エチオピアで起こっていた飢餓問題を救済するため、イギリスとアイルランドのスーパースターたちが集められ、〈バンド・エイド〉と名付けられたチャリティー・プロジェクトが立ち上げられた。

このチャリティー・シングルは、ゲルドフと、ウルトラヴォックスのミッジ・ユーロによって書かれ、5週連続全英1位の大ヒットとなり、イギリス史上最も売れたシングル・レコードとなった。

このプロジェクトは翌年に米国と英国を衛星中継で結んで同時開催された〈ライヴ・エイド〉へと繋がり、大きな成功を収めた。

Band Aid – Do they know it's christmas 1984 | HD – Widescreen 16:9

選んだ10曲がぶっ続けで聴けるYouTubeのプレイリストを作成しましたので、ご利用ください。

♪YouTubeプレイリスト⇒ ヒストリー・オブ・ロック 1984【世界的メガヒットの連発とバンド・エイド】Greatest 10 Songs

ぜひお楽しみください。

(by goro)