フィル・コリンズ/恋はあせらず (1982)

Phil Collins – You Can't Hurry Love – Vinyl (12", 45 RPM, Single), 1982 [r374253] | Discogs

【カバーの快楽】
Phil Collins
You can’t Hurry Love (1982)

わたしにとってフィル・コリンズは、大いなる謎だ。

彼のやることなすことのすべてがわたしの理解を超えてしまう。

80年代に入るとフィル・コリンズは、ジェネシスの活動と同時進行でソロ活動にも乗り出し、1982年11月発表の5枚目のシングル、シュープリームスのカバー「恋はあせらず」でついにジェネシスでも獲ったことがなかった全英1位、全米10位という大ヒットをかっとばす。

この選曲はなかなかのインパクトだった。

シュープリームスの中でもとびっきりチャーミングなこの名曲を、プログレドラムおじさんが歌うというミスマッチ感がただごとではなかった。なぜこの曲なのか、謎でしかない。

PVも、一人三役でシュープリームスを演じ、ノリノリで踊りながら歌う姿は、一見ユーモラスではあるけれども、「ジェネシスのドラマーがなぜこんなことを…」と思い始めると、このはしゃぎっぷりが異様なものに見えてくるのだ。

フィル・コリンズと言えば、最初の5枚のソロ・アルバムがすべて顔面どアップのアートワークというのも、謎だ。けっして容姿で売るタイプではないはずだけれども、あえてその逆を狙ったユーモアのつもりだったのだろうか。それとも意外に自信があったのだろうか。これもたしかになかなかのインパクトだった。

80年代の彼は、ソロもジェネシスも同時に大成功していて、当時は「世界一忙しい男」などと呼ばれたものだった。

英米の二つのステージを衛星中継で繋いだことで話題になった1985年のライヴ・エイドでは、ロンドンの会場で演奏した後、コンコルドでアメリカへ飛び、アメリカのステージでも演奏したことがあった。なぜそこまでするのかは謎だ。

彼は結局これまで1億5千万枚以上のCD・レコードをセールスしていて、これもわたしには結構な謎だが、これはもう好みの問題なので仕方がない。

たぶん彼の声には、多くのリスナーのハートに適度な潤いと癒しを与えるような音波みたいなものが含まれているのだと思う。それはなんとなく、わからないでもない。

2015年にフィル・コリンズのオリジナル・アルバム全8作がリマスターされて再発されると、なんと全作ジャケまで新装され、すべてオリジナルと同じ構図で現在の年老いたフィル・コリンズの写真に差し替えられたのである。こんなふうに。

↓ 1981年の1stのオリジナル・ジャケット

↓ 2015年発売のリマスター盤。

恐ろしいことをするものだ。売れたのだろうか。

フィル・コリンズという男、知れば知るほど、謎が深まるばかりである。

↓ シュープリームスのオリジナル。

(Goro)

コメント

  1. アイアイ♪ より:

    80年代は全てが謎の時代です(笑)。
    フィル・コリンズもそうですが、
    田舎の中学生(友人)が、普通にプリンスのアルバムを買って聴いていたことも謎だし、
    けったいな格好でおかしな動きをする、当時のミック・ジャガーをテレビで見て、
    かっこいい!と思っていた自分も謎。
    まあそのおかげで、時代を掘り下げて本当にかっこいいミックも見つけましたが(笑)。
    そして、当時は敬遠していたデュランデュランが、
    実は曲自体もかなりかっこいい(シングル曲ベースですが)という事実を、
    先日アップしていただいた記事で共感しましたよ♪
    といいつつ、当時スパンダー・バレエのアルバムを買った現実は隠せません・・・

    • Goro より:

      謎だらけの80年代ですね(笑)

      デュラン・デュランに共感してくれて嬉しいです。
      今聴くと、びっくりするほどカッコいいですよね(笑)