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“Cadillac Records”
監督:ダーネル・マーティン
主演:エイドリアン・ブロディ
シカゴ・ブルースを世に広め、ロックンロールをこの世に誕生させた、チェス・レコードの栄枯盛衰の物語。
映画は、チェスの屋台骨を支えた偉大なソングライター、ウィリー・ディクソンのこんな素敵な言葉から始まる。
「最初に女が下着をステージに投げ入れたのは、ブルースって音楽だった。白人女が投げ始めたとき、ロックンロールという名に変わった」
1950年代にシカゴでブルースのレーベルを立ち上げたレナード・チェスを主人公に、その後のロックの礎となったチェス・レコードのスターたちの活躍や栄光の裏側を描く、ブルース・ファンやロック・ファンにとってはたまらない物語だ。
タイトルは、売れたブルースマンたちにもれなく、レナードが豪華なキャデラックを買い与えたところから来ている。それが貧しい田舎者のブルースマンたちにとっての、アメリカン・ドリームのシンボルだったのだ。
物語の前半は、マディ・ウォーターズを中心に、彼がミシシッピの農村からシカゴへ出てきて、レナード・チェスやリトル・ウォルターと出会い、チェスの最初のスターになるところから始まる。
後半はチャック・ベリーが新しい時代の音楽「ロックンロール」のスーパースターとなるものの、逆にブルースの人気は衰退し、1969年にはチェス・レコードは身売りするまでに凋落してしまう。創業者のレナードがレーベルを手放した直後、死去するところで映画は終わる。
偉大なブルースマンだが、浪費家で私生活では意外とろくでなしなマディ・ウォーターズ、女好きでお調子者のチャック・ベリー、すぐにカッとなって銃をぶっ放すリトル・ウォルター、素晴らしい人格者のハウリン・ウルフ、売春婦の娘として生まれた過去を持ち、鼻っ柱は強いけれども孤独を癒すためにクスリに溺れるエタ・ジェイムスなど、登場するアーティストたちがすべて、実に個性豊かに描かれている。
わたしにとっては、偉大な神々たちが次々に出てくる、神話の映像化みたいなものだ。
エタを演じるビヨンセは、レナード・チェスを演じるエドリアン・ブロディと堂々と渡り合うほど演技が素晴らしく、その歌声がまた感動的だ。
いい女だなあ。。
(Goro)