
ボブ・ディランと同じ1941年に生まれたウィルソン・ピケットは、60年代のアトランティック・レコードの隆盛を支えた、サザン・ソウル・シンガーのスーパースターだ。
米アラバマ州出身の彼は幼い頃からゴスペルを歌い、ゴスペル歌手としてデビューした後に、ソウル歌手に転向した。
彼の魅力はなんと言ってもあの、細かいことは気にしない、大らかな激唱スタイルの歌声だろう。
彼の声を聴くとわたしはいつも、子供の頃に家の近所にあった魚屋のおっちゃんの呼び込みの声を思い出す。明るくて屈託のない、人好きがする、商売向きの感じがする声だ。
その声のおかげもあってか、サザン・ソウル・シンガーの中でも、セールス的に最も成功した歌手となった。日本でも彼のヒット曲はなじみ深いものが多い。たぶん彼の名前を知らない人でも、聴けば知っている曲もあるだろうと思う。
また、彼のソウル・ミュージックの魅力は彼の歌声だけではなく、60年代のメンフィスの最高のミュージシャンたちによる素晴らしいサウンドもまたその魅力の大きな部分を占めている。
以下はわたしがお薦めする、最初に聴くべきウィルソン・ピケットの至極の名曲5選です。
In the Midnight Hour
ウィルソン・ピケットのブレイク作で、初めて米R&Bチャート1位に輝いた曲。全米チャートでも21位まで上昇した。
親しみやすいメロディやピケットのヴォーカルももちろん良いが、スタックス・スタジオの素晴らしいミュージシャンたちの明晰で力強いソリッドな演奏がまた素晴らしい。
Land of a Thousand Dances
全米6位となったピケットの最大のヒット曲。この曲のオリジナルはクリス・ケナーだが、「ナーナナナナー」を追加したこのピケット版のほうが大きなヒットとなった。
日本でもよく知られ、聴けばわかる人も多いはずだ。エネルギッシュで能天気で最高のダンスナンバーだ。
Mustang Sally
全米23位、R&Bチャート6位。録音はアラバマ州にあるこれも有名なマッスルショールズ・スタジオだが、ここのミュージシャンたちが作り出すサウンドもまたひと味違ったカッコ良さだ。
この曲は1991年の映画『ザ・コミットメンツ』で、コミットメンツの演奏シーンのハイライトのひとつとなっていたので知ってる方も多いかもしれない。
Funky Broadway
全米8位、R&Bチャート1位となった大ヒット曲。初期ファンク・スタイルの、踊るベースとキレのいい演奏がめちゃカッコいい。
Don’t Knock My Love Pt.1
全米13位、R&Bチャート1位。この曲は1970年代末頃の『8時だョ!全員集合』で、合唱隊の早口言葉のコーナーで使用され、大流行した曲なので、昭和生まれの方なら知っている人も多いだろう。この曲を選んだのは、当時ブラック・ミュージックのレコードを買い漁るのが趣味だった、志村けんだった。
入門用にウィルソン・ピケットのアルバムを最初に聴くなら、わたしも昔からよく聴いた『グレイテスト・ヒッツ』がお薦め。ここで選んだ5曲はもちろん、彼の代表曲が網羅されています。
(Goro)
