
⭐️⭐️⭐️⭐️
Velvet Crush
“In the Presence of Greatness” (1991)
このわたしが、パワー・ポップにはちょっと甘い。いや、だいぶ甘いかもしれない。
こんなバンドの、こんなアルバムが大好きだと言っても、いったいどれだけの人が共感してくれるものか、まったくもって自信がない。
どこからどう見ても、聴いても、イギリスのバンドだと思った。たぶん、スコットランドあたりの。
でも違うのである。アメリカのバンドなのだ。ロードアイランド州プロビデンスという、どこだかわからない地方のバンドだったのである。
ヴェルヴェット・クラッシュといっても、残念ながら、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの要素もザ・クラッシュの要素もまったくない。バンド名で変にハードルを上げるのは良くないことだ。
英スコットランドのティーンエイジ・ファンクラブみたいな感じだな、と思っていたら、どうやら彼らに影響を受けたらしいのだ。
地元のインディ・レーベルからデビューした彼らは、1991年に4枚目のシングルとしてティーンエイジ・ファンクラブの「エヴリシング・フロウ」のカバーをリリースした。
すると、ティーンエイジ・ファンクラブと契約したばかりだったクリエイション・レコードから打診があり、彼らもまたクリエイションと契約することになったのだった。
本作はそのクリエイションから1991年にリリースされたヴェルヴェット・クラッシュの1stアルバムである。プロデュースはパワー・ポップの兄貴格とも言える、ラムちゃん好きのマシュー・スウィートである。
【オリジナルCD収録曲】
1 ウィンドウ・トゥ・ザ・ワールド
2 ドライブ・ミー・ダウン
3 アッシュ・アンド・アース
4 ホワイト・ソウル
5 スーパー・スター
6 ブラインド・フェイス
7 スピードウェイ・ベイビー
8 ストップ
9 アスホール
10 ダイ・ア・リトル・エブリデイ
11 アトモスフィア
12 ジェントル・ブリーズ
13 バタフライ・ポジション
ギターが良い感じにラウドで、勢いがあり、歌メロが琴線に触れる、青春パワー・ポップだ。
派手過ぎず、地味すぎず、カッコ良すぎず、ダサすぎず、という中庸のロックと言うべきか、凡人のロックとでも言うべきか、そんな素朴な味わいがたまらない。この素朴でフツーな感じの凡人ロックというのは、あるようで意外とないものだ。需要がないだけかもしれないが。
そしてこの、もっさりしたイケてない見た目と、押し出しの弱い、ナヨナヨした感じがまたたまらない。マッチョと陽キャがヘビやカエルよりも苦手だったわたしは大いに共感して、友達みたいに思って聴いていたものである。
しかし、60年代のアメリカン・ロックが好きな人であれば、これを聴いて、ザ・バーズを思い出す人もいるだろう。
もともとは、ティーンエイジ・ファンクラブがザ・バーズに影響を受け、そのティーンエイジに影響を受けたのがヴェルヴェット・クラッシュなのだ。なんのことはない、アメリカで生まれたフォーク・ロックがイギリスでパワー・ポップに進化して、またアメリカに戻ってきたというわけだった。
そしてここから、その後のアメリカのパワー・ポップは、ザ・ポウジーズやウィーザーへと引き継がれ、勢力を拡大していったと思われる。
↓ アルバムのオープニングを飾る、程よくラウドなサウンドと弱々しい歌声がたまらない「ウィンドウ・トゥ・ザ・ワールド」。
↓ 切ないメロディがたまらない「ブラインド・フェイス」。わたしはこの曲が一番のお気に入りだ。
(Goro)

コメント
あーこのジャケット。その頃付き合ってた押し入れダンスにCDを収納してた彼氏の持ってたやつだ。と思い出しながら”Window To The World”を聴きました。汚い部屋だったなーなんて考えながらだいぶ大人になった今の自分の耳で聴くと素直にいいなと思えるバンドです。ちなみにこの後のアルバムは自分で買いました。
プリンさん、コメントありがとうございます!
実はこのアルバムは今はなぜかジャケットが変わっているのですが、あえて当時のジャケット画像を拾い出して載せました。その甲斐がありました。よかったです。
わたしもこの当時は築60年みたいな、江戸時代の貧乏長屋みたいなところに住んでいました。トイレは汲み取り式だし、定期的に部屋の中にでかいムカデが出るし、そりゃもうキレイとは言い難い部屋でした。