バッドフィンガー『ノー・ダイス』(1970)【最強ロック名盤500】#161

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【最強ロック名盤500】#161
Badfinger
“No Dice” (1970)

バッドフィンガーは「ビートルズの弟分」として1969年にアップル・レコードから〈ジ・アイヴィーズ〉としてデビューした。

そのデビュー・アルバムは当時のアップル・レコードの内部のゴタゴタの影響でイタリア、西ドイツ、日本でしか発売されず、当然ながらセールス的にも失敗した。

名前をバッドフィンガーに改めてリリースした再デビューアルバムは、リンゴ・スターの主演映画『マジック・クリスチャン』に使われた3曲と、前作から7曲を再録した『マジック・クリスチャン・ミュージック』で、兄貴分のポール・マッカートニーの作・プロデュースによる「カム・アンド・ゲット・イット」がシングルヒットした。

そして1970年11月にリリースされた本作は、バッドフィンガー名義での2ndアルバムである。今回は兄貴分たちは参加せず、全曲オリジナルである。

本作はまた「元祖パワー・ポップ」としても知られているアルバムでもある。

「パワー・ポップ」とは70年代後半に生まれた名称で、ギターをガツンと鳴らすようなパワフルなサウンドでありながら、同時にメロディアスな歌メロを持つスタイルのことで、わたしの大好物でもある。

その源流をたどっていくとバッドフィンガーの『ノー・ダイス』に行き当たるというのは、よく言われることだ。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 アイ・キャント・テイク・イット
2 アイ・ドント・マインド
3 ラヴ・ミー・ドゥ
4 ミッドナイト・コーラー
5 嵐の恋
6 ウィズアウト・ユー

SIDE B

1 ブラッドウィン
2 ベター・デイズ
3 イット・ハッド・トゥ・ビー
4 ワットフォード・ジョン
5 ビリーヴ・ミー
6 ウィアー・フォー・ザ・ダーク

本作からはA5「嵐の恋」がシングル・カットされ、全英5位、全米8位のヒットとなった。一聴して「あれ? ポール・マッカートニーが書いた曲?」と思わずライナーのクレジットを確認してしまうほど、1965年頃のビートルズみたいな曲だが、一応ヴォーカル&ギターのピート・ハムの作である。

ちょうどビートルズが解散を発表して半年という時期であり、ビートルズ・ロスで死にかけていたファンを喜ばせたことだろう。なんてかわいい弟分だ、と思ったに違いない。

イントロからガツンとくるギターがカッコいいし、一度聴いたら忘れられない歌メロも印象的だ。まさにパワー・ポップのお手本と言っていいだろう。

オープニングのソリッドな「アイ・キャント・テイク・イット」や美メロの「ミッドナイト・コーラー」などA面はやたらと充実しているが、そのA面最後にバッドフィンガーで唯一と言っていい誰もが知る名曲「ウィズアウト・ユー」が収録されている。

翌年のハリー・ニルソンによるカバーが英米で1位を獲得するなど世界的な大ヒットとなり、90年代にはマライア・キャリーによって再びメガヒットとなったあまりに有名な曲だ。

デビュー時からレコード会社のゴタゴタに巻き込まれたり、金銭的な揉め事も絶えなかった「悲劇のバンド」としても知られるバッドフィンガーだが、その「ウィズアウト・ユー」をシングル・カットすることもなく、商業的な成功をニルソンに譲ることになってしまったことがさらなる悲劇を呼ぶ。

長くなったので、彼らの悲劇については明日の記事で続きを書くことにしよう。

↓ 全英5位、全米8位のヒットとなったシングル「嵐の恋」。

↓ ニルソンやマライアのカバーによって世界的なヒットとなった「ウィズアウト・ユー」。

(Goro)

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