ヴァン・ヘイレン/オー・プリティ・ウーマン (1982)

ダイヴァー・ダウン

【カバーの快楽】
Van Halen
Oh, Pretty Woman (1982)

1982年4月に発表されたヴァン・ヘイレンの5枚目のアルバム『ダイヴァー・ダウン(Diver Down)』からのシングルで、全米12位のヒットとなった。

ちなみに「ジャンプ」で大ブレイクする前の初期ヴァン・ヘイレンにとってトップ20入りしたヒット・シングルは、「ダンス・ザ・ナイト・アウェイ」とこの曲の2曲だけである。

オリジナルはロイ・オービソンの1964年の大ヒット曲だ。

1990年にはリチャード・ギアとジュリア・ロバーツの主演の映画『プリティ・ウーマン』の主題歌に使用され、映画は世界的なヒットとなったのはご存知の通りだ。

アルバム『ダイヴァー・ダウン』は12曲中5曲がカバーで2曲が短いインストという、なんだかやっつけ仕事みたいにも見えるアルバムだが、どうも所属レコード会社のワーナーから「みんなが知ってる曲をたくさん入れれば売れるんじゃないか」という一見超テキトーな提案に従って作られたらしい。

そしてその結果は、全米3位となって400万枚を売るという、デビュー以来最高の売り上げとなり、ワーナーの超テキトーな思惑通りになった。

ちなみにエディとアレックスのヴァン・ヘイレン兄弟は、いちばん嫌いなアルバムは?と訊かれると、口をそろえてこのアルバムを挙げるという。

難しい世界だ。音楽業界って。

でもこういう芸術的意図とは別の思惑で制作されたものがロックンロール・マジックを起こして、多くの奇跡的な名曲が生まれてきたのも事実だ。このカバー・ソングの中にロックンロール・マジックの瞬間がないともいえない。わたしが聴いた限りでは、ないこともない。

↓ ロイ・オービソンのオリジナル。

(Goro)