トム・ウェイツ/オール’55 (1973)【’70s Rock Masterpiece】

【70年代ロックの名曲】
Tom Waits
Ol’ 55 (1973)

トム・ウェイツの1stアルバム『クロージング・タイム』からカットされたも彼の1stシングル。

「オール’55」とは、1955年型の古い車、という意味で、実際にトム・ウェイツが乗っていた、55年型ビュイック・ロードマスターのことだ。彼は古い車が好きで、これを手に入れたことがすごくうれしかったらしい。

まるでジジイがノスタルジーに浸っているような歌のようだが、トム・ウェイツはこの当時たったの23歳だ。彼は16歳で高校を中退してピザ屋で働きながら曲を書き始めた。当時流行のロックには興味がなく、ブルースやフォーク、ジャズなどに傾倒していた。

見た目も声も音楽も、そして車の趣味まで、ずいぶんと老けた23歳だなあと思う。でも、だから信用できるのだけれども。

歌詞を読むとどうやら、幸運にも女性とひと晩を過ごし、夜明けに家路を辿る車の中で、その満ち足りた幸福感に浸っている感じだ。男ならわかるに違いない、あの最高の時間だ。

彼の多くの名曲と同じように、人生の苦さやせつなさを知りつつ、平凡でささやかな幸福感がじんわりこみあげてくるような、油断してると説明しにくい謎の涙も一緒にこみあげてくるような、そんな歌だ。

↓ 1974年発表のイーグルスの3rdアルバム『オン・ザ・ボーダー』に収録されたカバー。


(Goro)