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Thin Lizzy
“Jailbreak” (1976)
シン・リジィは1970年にデビューした、アイルランドのバンドだ。バンドは世界的人気を博し、ヴォーカル兼ベースでソングライターでもある中心人物、フィル・ライノットは、アイルランドの首都ダブリンに等身大の銅像が建てられたほどの国民的英雄となっている。
デビュー当初はアイリッシュ・フォークを取り入れた3人編成のサイケデリック・ロック風のバンドだったが、まったく売れず、長く続く下積みの間に徐々にハード・ロック寄りにシフトしていく。
4枚目のアルバムからギタリストが新たに加入し、シン・リジィの看板となった「レスポールのツイン・リード・ギター体制」が完成する。そして1976年3月にリリースした本作、6thアルバム『脱獄』でついにブレイクを果たした。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 脱獄
2 エンジェル・フロム・ザ・コースト
3 ランニング・バック
4 ロメオとロンリー・ガール
5 勇士
SIDE B
1 ヤツらは町へ
2 ファイト・オア・フォール
3 カウボーイ・ソング
4 エメラルド
シングル・カットされたB1「ヤツらは町へ」がアイルランドのシングル・チャートで1位を獲得し、さらに全英8位、全米12位の世界的なヒットとなった。そしてアルバムも、全英10位、全米18位のヒットとなった。
アルバムが発売された直後に彼らはアメリカ・ツアーを行ったものの、当初はアルバムの売れ行きは悪く、チケットも売れなかったという。しかしケンタッキー州ルイビルの2人のラジオDJが「ヤツらは町へ」を気に入り、ひっきりなしにかけ続けたところ、やがて周辺のラジオ局に波及し、全米でのヒットに繋がった。
バンドのギタリストであるスコット・ゴーハムは、「ルイビルのDJたちのおかげだ。この曲がアルバムの売り上げを牽引していなかったら、バンドは終わっていただろう」と語っている。
シン・リジィはツイン・リードを武器にしたハード・ロック・バンドのイメージが強いが、フィル・ライノットのソング・ライティングはリフ一発のハード・ロックだけではなく、ポップな要素も多分にあり、本国の大先輩、ヴァン・モリソンを手本にしたようなA3「ランニング・バック」や、パブ・ロック風のA4「ロメオとロンリー・ガール」、カントリーの要素も入れたB3「カウボーイ・ソング」など、幅広い音楽性が魅力だ。
この時代のハード・ロックには、ほとんどリフだけで出来ていて「歌」が感じられない楽曲も多いけれども、その点、フィル・ライノットという才能に率いられたシン・リジィの楽曲にはまず中心に「歌」があり、さらにハード・ロック風に弾きまくるツイン・レスポールが楽しめるという、なんとも贅沢な味わいのバンドなのである。
↓ ライヴのオープニング・ナンバーとして定着した代表曲「脱獄」。
↓ 窮地のバンドを救った、胸踊る大ヒット曲「ヤツらは町へ」は、シン・リジィの最も有名な代表曲だ。
(Goro)