英イングランド出身のザ・ゾンビーズは、1964年にデビューした。
彼らもまた当時のブリティッシュ・インヴェイジョン(イギリスのロックバンドによるアメリカへの侵略)の一角を担ったが、特にゾンビーズはデビュー・シングルがいきなり全米2位(全英12位)となるなど、本国よりもむしろアメリカでブレイクした。
英・米でそれぞれシングル曲を中心に編集した1stアルバムを1枚ずつ出した後、1968年に2ndアルバムとして当時流行中だった〈コンセプト・アルバム〉のスタイルで作られた『オデッセイ・アンド・オラクル』をリリースする。メロトロンを使うなど実験的なサウンドも面白いが、楽曲も充実している。ビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』にも比肩する、コンセプト・アルバムの名盤の筆頭に挙げられる作品だ。
しかし残念ながらこのアルバムの制作中にバンド内の人間関係が悪化し、アルバムがリリースされる前に解散してしまった。
ストーンズやビートルズ、ザ・フーなどとも違う、独特の色気がゾンビーズのいくつかの名曲から感じられる。ひねりのある歌メロのポップ・センスもまた冴えたものだ。
以下はわたしがお薦めする、最初に聴くべきゾンビーズの至極の名曲5選です。
She’s Not There
ゾンビーズのデビュー・シングルで、バンドの中心人物だったキーボードのロッド・アージェントの作。イギリスでは12位ながら、アメリカでは全米2位といういきなりの大ヒットをぶちかました。
従来のポップスの体裁を纏いながらも、その破れ目から意外な展開が顔をのぞかせるような、ぐんにゃり系ひねりポップスだ。
Tell Her No
アージェント作の3枚目のシングル。全英42位、全米6位とこれも圧倒的にアメリカで支持された。これもまたすごく風変わりなポップスだけど、ちゃんとキャッチーだから凄い。
I Love You
ベーシストのクリス・ホワイト作。シングル「お好きな時に(Whenever You’re Ready)」のB面としてリリースされた。
イギリスではヒットしなかったが、日本ではグループサウンズのザ・カーナビーツが1967年に「好きさ 好きさ 好きさ」という邦題で日本語カバーをリリースし、大ヒットした。
Care of Cell 44
当時大流行したコンセプト・アルバムの中でも特に素晴らしい完成度と美しさを誇る名盤2nd『オデッセイ・アンド・オラクル(Odessey and Oracle)』のオープニング・トラック。
刑務所に入っているらしい恋人の女性に宛てた手紙という体裁で「もうすぐ君が帰ってくるからすごくワクワクしてるんだ」と歌う、これまた風変わりな設定の歌詞だ。休日の朝に聴くのにぴったりな、爽やかな楽曲。
Time of the Season
『オデッセイ・アンド・オラクル』からのシングルで、全米3位の大ヒットとなった代表曲。間違いなくこの曲がゾンビーズの最高傑作だ。
カナダでも1位になったが、なのになぜかイギリスでは当時まったくチャート入りしなかったのが逆に驚きだ。
日本でもCMに使われるなど人気の高い曲だ。なにか20年ぐらい前の邦画のエンディング曲にも使われていた記憶があるけれども、あれはなんの映画だっけな。うーん、思い出せない。。
入門用にゾンビーズのアルバムを最初に聴くなら、ベスト盤もいいけれども、コンセプト・アルバムの名盤『オデッセイ・アンド・オラクル』の方をお薦めしたい。これが気に入らなければ、もうそれ以上ゾンビーズを聴いてみても仕方がないように思う。