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The Yardbirds
“Five Live Yardbirds” (1964)
英ロンドンで1962年に結成されたバンド、ヤードバーズは、三人の有名なギタリスト、エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジが在籍したことで知られている。
本作はヤードバーズの1stアルバムとなった、マーキー・クラブでのライヴ録音盤だ。1964年12月にリリースされた。
今の若い人が聴いたら、まるで海賊盤みたいなグシャッと潰れた音にびっくりするかもしれないが、この当時のライヴ録音なんてこんなものなのだ。むしろこのライヴ盤は、そのグシャッとした歪んだ音、凄まじい熱気、性急なスピード感によって、異様な迫力で臨場感が伝わってくるのが魅力なのである。
初期のブリティッシュ・ビートらしく、全曲ブルースやR&Bカバーだけで構成されている。カッコ内はカバー元のアーティスト。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 トゥー・マッチ・モンキー・ビジネス (チャック・ベリー)
2 アイ・ガット・ライヴ・イフ・ユー・ウォント・イット (スリム・ハーポ)
3 スモークスタック・ライトニング (ハウリン・ウルフ)
4 グッド・モーニング・リトル・スクールガール (サニー・ボーイ・ウィリアムソン)
5 リスペクタブル (アイズレー・ブラザーズ)
SIDE B
1 ファイヴ・ロング・イヤーズ (エディ・ボイド)
2 プリティ・ガール (ボ・ディドリー)
3 ルイーズ (ジョン・リー・フッカー)
4 アイム・ア・マン (ボ・ディドリー)
5 ヒア・ティス (ボ・ディドリー)
このときのギタリストは、当時18歳のエリック・クラプトンだ。オープニングで”スローハンド”の異名とともに紹介され、ひときわ大きな歓声を浴びていることでも、すでに彼がロック史上初のスター・ギタリストとなっていたことがわかる。
しかしブリティッシュ・ビート・バンドのレコードが全曲カバーでも受け入れられた時代はもうこの年限りで、翌1965年になると早くも、オリジナル曲じゃないと生き残れない時代になる。この時代のロックの進化は、とにかく速い。
カバーからオリジナルへ、このリスナーの需要の急速な変化への対応には多くのブリティッシュ・ビート・バンドが苦闘し、右往左往し、迷走したものだが、ヤードバーズも例外ではない印象だ。いや、そもそも例外はビートルズだけで、ヤツらが『ハード・デイズ・ナイト』などという全曲オリジナルのアルバムを作ってしまったからいけないのである。
ヤードバーズは3枚目のシングル「フォー・ユア・ラヴ」というオリジナル曲でガラッと音楽性を変えて、商業的に成功したが、わたしはそこから後のヤードバーズはどうも苦手なのだ。
ど迫力とはいえ、決して聴きやすい音質でもないのでお薦めはしにくいのだけれども、わたしがヤードバーズから1枚選ぶとしたらやはりこれなのだ。
聴きづらいと思ったら、あえてボリュームをグイッと上げてみるといい。
1964年のロンドン、爆音のマーキー・クラブへとタイム・スリップした気分になれるはずだ。
↓ 今にも崩壊しそうなほどのド迫力の「アイム・ア・マン」。
↓ 彼らの2枚目のシングル「グッド・モーニング・リトル・スクールガール」の高速ライヴ・バージョン。リード・ヴォーカルはエリック・クラプトンだ。
(Goro)