ザ・フー【名曲ベストテン】The Who Best 10 Songs

カッコいいスポーツカーも持っていないし、ダンスをしてくれる女の子もいない。
流行のファッシュンも似合わないし、人とのコミュニケーションが大の苦手。
まともな社会人にもなる自信もなくて、生きていくことが不安でしょうがない。

そんな非リア充の若者たちのフラストレーションや反抗を、ロックで表現したのがザ・フーであり、それはそのままパンク・ロックの源流ともなった。

ピート・タウンゼント、ロジャー・ダルトリー、ジョン・エントウィッスル、キース・ムーンと、性格も演奏も独特の個性を持った4人が奇跡的に集まった、唯一無二のサウンドを持つバンドだった。

彼らには若者らしい問題意識と、実験精神と、ユーモアと、そして素晴らしいポップセンスとが備わっていた。

以下はそんなザ・フーの、わたしが選ぶ名曲ベストテンです。

第10位 マジック・バス
Magic Bus(1968)

68年に発表された、オリジナル・アルバムには未収録のシングル。英26位、米25位。ボ・ディドリーが発明したジャングルビートをアレンジしたような、独特のビートがカッコいい曲だ。

ピート・タウンゼントは演奏していていちばん楽しいのがこの曲だったそうだが、ジョン・エントウィッスルは逆にベース・パートが単調すぎて大嫌いだったそうだ。

第9位 ピンボールの魔術師
Pinball Wizard(1968)

68年発表の史上初のロック・オペラ、『トミー』からのシングル。全英4位のヒットとなった。

『トミー』は、幼少時代のトラウマから、見えない・聴こえない・話せないという三重苦を負った少年トミーの物語である。虐待などの不幸な少年時代を経て、神がかり的なピンボールの才能を発揮してカリスマとなるが、最後には支持者を失って没落するというストーリーだ。

『トミー』はロジャー・ダルトリー主演で映画化され、ブロードウェイでミュージカルとしても上演された。

第8位 恋のマジック・アイ
I Can See For Miles(1967)

3rdアルバム『セル・アウト』からのシングルで、全英10位、全米9位と、ザ・フーにとってアメリカで1番売れたシングルだ。

一聴するとドラムのキース・ムーンの手数がすごくてバケモノみたいだが、もちろんこれはオーバーダビングだ。実際のステージでは再現不可能なので、ライヴで演奏されたことはほとんどないらしい。

第7位 アイ・キャント・エクスプレイン
I Can’t Explain(1964)

ザ・フーのデビュー・シングルで、全英8位のヒットとなった。

胸の中に生まれた熱い感覚や辛い気持ちをうまく説明できない、という歌詞で、恋愛のことを歌っているようにも取れるけれど、やっぱりザ・フーなのでわたしは「新しい世代が感じているこの気持ちは、古い世代の言葉じゃ説明出来ないんだ」とでも受け取りたい。

こんなにカッコいい曲なのだから、それにふさわしい意味を想像しながら聴いたほうがいいじゃない。

第6位 サマータイム・ブルース
Summertime Blues(1970)

エディ・コクランの名曲のカバーで、1970年発表のライヴ・アルバム『ライヴ・アット・リーズ』に収録された。

「サマータイム・ブルース」には数多くのカバーが存在するけれども、わたしが聴いた限りではこのザ・フーのバージョンが掛け値なしに最高傑作だと思う。ライヴ・バンドの本領を発揮した、凄みのある演奏に圧倒される。

第5位 恋のピンチヒッター
Substitute(1966)

ヘンな邦題だけど、”Substitute”とは「代わり」「代理」「代用」というような意味らしい。全英5位のヒットとなった。

「なにからなにまでウソだしニセモノだ」と、ユーモアに替えながらも意外と核心をついてくる歌詞だ。鋭く深い歌詞を天才的なポップセンスでキャッチーでキレのいいロックナンバーにする、ピートの真骨頂である。

 第4位 無法の世界
Won’t Get Fooled Again(1971)

5thアルバム『フーズ・ネクスト』のラストに収められたこの曲は、「革命」について異を唱えている歌だ。

国民を虐げたり自由を奪ったりするような体制は倒されたほうがいいにきまってるけど、しかし倒した指導者が今度は新体制の維持のために意見の異なる者たちを排除し、国民を管理・抑圧していった当時の共産主義革命のことを指しているのだろう。

この、人が人を支配するための醜い争いの繰り返しに、心底虚しい気持ちで、「二度と信じるものか!」とこの曲は歌っている。

第3位 キッズ・アー・オールライト
The Kids Are Alright(1965)

1stアルバム『マイ・ジェネレーション』に収録された、ザ・フー初期の代表曲だ。

大人になることへの不安や寂しさ、若い世代への肯定感を感じる、カッコよくて、美しくて、感動的な曲だ。シンプルでムダが無く、素晴らしいポップセンス。きっと10万回聴いても飽きないと思う。

第2位 ババ・オライリィ
Baba O’Riley(1971)

5thアルバム『フーズ・ネクスト』のオープニング・トラック。躍動感あふれる、青春の雄叫びみたいな名曲だ。

60年代のザ・フーに比べると、ハード・ロックやプログレ方面に路線を寄せていく頃だけど、「十代なんてクソつまんねえ!(teenage wasteland!)」なんて憤りを顕わにするのは「マイ・ジェネレーション」の頃からちっとも変わっていない。

第1位 マイ・ジェネレーション
MY Generation(1965)

既存の社会や大人たちの価値観に反抗し、若い世代の声を、当時としてはこれ以上ないほどの騒々しさで表現した曲。フィードバック・ノイズが、まるでやり場のないフラストレーションの大放電のように聴こえる。

大人たちに不満をぶつけて、新しい世代として主張をしたいのだけど、吃音がひどくてうまく言えないという設定がまた面白い。ザ・フーの描く若者はいつも、コミュニケーションに致命的な難があり、社会に参加することに不安を感じ、劣等意識を抱えた、「非リア充」の若者だ。

全英2位のヒットとなったザ・フーの代表曲であり、ロック史上最初のパンク・ロック・アンセムと言っても間違いではないと思う。

オリジナル・アルバムを聴くなら、まずは1stの『マイ・ジェネレーション』から。

ザ・フーはアルバム未収録のシングルに名曲も多いので、ベスト盤ももちろん必聴だ。

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コメント

  1. アイアイ より:

    Substitute は「控え」や「補欠」といった意味が大きいですよね。
    英国のサッカー中継でもベンチメンバーは Substitute と表現されます。
    僕は学生時代に剣道をやっていましたが補欠でした。
    そして大人になって草サッカーチームでプレーしていましたが、やはり補欠。
    この曲を聴くといつも、当時の心境や環境、自分を取り巻いていた状況が思い出され心がむず痒くなります。
    名曲ですね♪

    • Goro より:

      アイアイさん、コメントありがとうございます。

      なるほど、「補欠」はいい訳ですね。彼氏じゃなくて、彼氏の補欠ですね(笑)