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The Verve
“Urban Hymns” (1997)
まあなにしろ、びっくり仰天の大ヒットだった。
ザ・ヴァーヴである。
彼らを最初に聴いたのは、1992年リリースの5曲入りEP『ザ・ヴァーヴ E.P.』だった。サイケデリックな感じでそれなりに雰囲気はあったけれど、もうひとつ掴みどころがなく「うーん、イマイチ」と思ってCD棚にしまい込んでしまったものだった。毎年というか、毎月というか、出てきては消えていく、インディー系バンドのひとつ、ぐらいの認識だった。
しかしそれから5年後、もう記憶からその名前も消えかかっていた頃に、本作の1曲目に収められている「ビター・スウィート・シンフォニー」の、驚天動地の世界的ヒットである。
ええっ、あ、あの、ヴァ、ヴァ、ヴァーヴが!? てなもんだった。
日本でもヒットし、2012年に始まったフジテレビの『テラスハウス』にも使われたことで、ヴァーヴの名前も、曲のタイトルも知らなくても、聴き覚えのある方は多いだろう。一度聴いただけでストリングスのリフレインが頭から離れなくなる、印象の強い曲だ。
実はヴァーヴはこの直前、1995年に2ndアルバムをリリースした後、一度解散してしまったのだ。ヴォーカリストのリチャード・アシュクロフトとギタリストのニック・マッケイブの音楽的な方向性の相違から発した亀裂がそのきっかけだったようだ。
なので本作は、もともとはリチャード・アシュクロフトのソロ・アルバムとして制作が始まったのだった。しかし制作中にバンドを呼び戻し、最終的にはニックのギターがどうしても欲しくなり、彼も呼び戻し、あらためてヴァーヴの3rdアルバムとして制作されたものらしい。
本作は1997年9月にリリースされた。その3ヶ月前にシングルとしてリリースされていた「ビター・スウィート・シンフォニー」の大ヒットに牽引され、アルバムも全英1位、全米23位、全世界で500万枚を売る大ヒットとなった。
【オリジナルCD収録曲】
1 ビター・スウィート・シンフォニー
2 ソネット
3 ザ・ローリング・ピープル
4 ドラッグス・ドント・ワーク
5 キャッチング・ザ・バタフライ
6 ネオン・ワイルダーネス
7 スペイス・アンド・タイム
8 ウィーピング・ウィロー
9 ラッキー・マン
10 ワン・デイ
11 ディス・タイム
12 ヴェルヴェット・モーニング
13 カム・オン
前作までの地味めなサイケデリック・ロックから一転、リチャード・アシュクロフトが書く印象的なメロディと、ストリングスを導入したドラマチックなアレンジが前面に出た作品だ。
オアシスのノエル・ギャラガーが「30回連続で聴いた」と語った名曲「ビター・スウィート・シンフォニー」のみに終わらず、次から次へと耳に馴染みやすい、しかしシリアスで聴きごたえのある名曲・佳曲が連続する。
ちなみに「ビター・スウィート・シンフォニー」については、ローリング・ストーンズの初期の楽曲の版権を持つ、元ストーンズの悪徳マネージャー、アンドリュー・オールダムから著作権侵害で訴訟を起こされ、敗訴している。
ストーンズの曲をオーケストラのインストに勝手にアレンジしたアルバム『アンドリュー・オールダム・オーケストラ/ザ・ローリング・ストーンズ・ソング・ブック』の「ザ・ラスト・タイム」に使われたストリングスのフレーズが、「ビター・スウィート・シンフォニー」でサンプリングされているためだった。
イントロの、印象の強いあのフレーズのほうではなく、ずっとコードのように地味に繰り返されているほうのストリングスだ。アンドリューの言い分は「サンプリングは許可したが、こんなに長く使うとは聞いていなかった」ということらしい。きっと本音は「こんなに売れるとは思っていなかった」だろう。
なので、この曲のクレジットは「ジャガー&リチャーズ」ということになり、リチャード・アシュクロフトには印税はまったく入らなかったという。
気の毒なリチャード。
べつに「ザ・ラスト・タイム」の原曲にはもともと無いフレーズだし、どうにも腑に落ちない感じはする。
わたしは2017年にそれについてこのブログで書き、最後にこう締め括った。
「ジャガー&リチャーズなんてヴァーヴの1万倍は稼いでるだろうし、「The Last Time」のオールダム・バージョンなんかより、この曲のほうがずっと多くの人々に愛されたのは間違いないのだから、もうちょっと大らかになってあげてもよかったんじゃないか。」
その後の2019年、そのわたしの記事を読んだわけもなかろうが、ジャガー&リチャーズはこの曲の著作権をリチャード・アシュクロフトに無償で返還した。
この年のアイヴァー・ノヴェロ賞(英国の作詞家・作曲家のための権威ある音楽賞)の授賞式で、リチャード・アシュクロフトはその件について以下のようにスピーチした。
「ミックとキースの寛大で高潔な判断に感謝している。ようやく、自分が書いた『傑作』だと胸を張って言えるようになった。この曲は永遠に生き続けるだろう」。
↓ 世界的ヒットとなった代表曲「ビター・スウィート・シンフォニー」。今日のような、爽やかな休日の朝にぴったりの曲だ。
↓ 全英7位のヒットとなった「ラッキー・マン」。リチャード・アシュクロフトがいちばん好きだと語っている曲だ。
(Goro)
