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The Style Council
“Café Bleu” (1984)
若い頃のわたしはパンクなジャムが好きだったので、そのあとでスタイル・カウンシルを聴いたときには呆然としたものだ。「なんなんだこの気取ったオシャレ音楽は!」。激しく失望した。まったく気に食わなかった。
しかもまたも、身近にいた、田舎者のくせしてオシャレ気取りな大学生が「スタカン、カッコいいいよねぇ」なんて言うのを聞いて「ジャムも聴いことないくせに!」などとお門違いなムカッ腹を立てていたものだった。
当時の若いわたしには、スタカンは必要以上にオシャレで、ブルジョワ的で、非ロック的に聴こえたものだったのだ。
きっと当時のわたしは、音楽に勢いと刺激とカタルシスしか求めていない、フラストレーションで満タンのクソガキだったのだ。毎日三食激辛ラーメンを求めていたようなものだった。
あれから40年。
今あらためて本作を聴いてみると、これがもう面白いのなんの。
音が輝いている。ポール・ウェラーの声も、歌う喜びに溢れて、熱を帯びているようだ。
行き当たりばったりで作っていったアルバムだそうだけれど、そのとっ散らかった感じがまた生々しく、賑やかしくていい。
R&B、ソウル、ジャズ、ゴスペル、ファンク、ヒップホップ、ボサノヴァ、フレンチ・ポップスなど、幅広い音楽が聴こえてくるけれど、どうにもフェイクな香りもする。聴いていて真っ先に思い出したのは、『サージェント・ペパーズ』だった。
ビートルズが『サージェント・ペパーズ』で、架空のバンドを演じてみせたように、ポール・ウェラーとミック・タルボットは、架空のお洒落カフェで演奏しているサロン・ミュージック・バンドを演じているようにも聴こえる。女性歌手がゲストで参加したり、ラッパーが乱入したりと、賑やかなステージだ。まさに『サージェント・ペパーズ』に勝るとも劣らないコンセプト・アルバムの傑作のように聴ける。
本作は、1984年3月にリリースされ、全英2位の大ヒットとなった。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 ミックス・ブレッシング
2 ザ・ホール・ポイント・オブ・ノー・リターン
3 ミー・シップ・ケイム・イン
4 ブルー・カフェ
5 ザ・パリス・マッチ
6 マイ・エヴァ・チェンジング・ムーズ
7 ホワイトハウスへ爆撃
SIDE B
1 ゴスペル
2 ストレングス・オブ・ユア・ネイチャー
3 ユーアー・ザ・ベスト
4 ヒアズ・ワン・ザット・ガット・アウェイ
5 ヘッドスタート・フォー・ハッピネス
6 カウンシル・ミーティン
A6「マイ・エヴァ・チェンジング・ムーズ」、B3「ユーアー・ザ・ベスト」は、どちらも全英5位まで上昇するヒットとなった。この2曲はポール・ウェラーの最高傑作の中に数えられていい名曲だ。A5「ザ・パリス・マッチ」のリード・ヴォーカルはエヴリシング・バット・ザ・ガールのトレイシー・ソーンが務めている。これもまた本作の聴きどころのひとつだ。
ポール・ウェラーは18歳のときにザ・ジャムで「この街で輝いているのは25歳以下の若者だけ」と歌った。
そして彼自身が25歳になると、ジャムを解散し、スタイル・カウンシルを結成した。きっと25歳を過ぎても輝き続けるために、新たなステージに挑戦したのだろう。怒れるモッズ少年が、その熱い魂はそのままに、音楽の幅を広げ、さらなるプロフェッショナルな音楽家へと成長している。
わたしも40年かけて少しは成長し、彩り豊かな山海の幸を楽しむ高級料亭の味が多少はわかるようになった気分だ。激辛ラーメンもまあ、いまだに好きではあるけれども。
↓ ラジオでも人気を博し、全英5位のヒットとなった甘美なラヴ・バラード「ユーアー・ザ・ベスト」。
↓ 全英5位のヒットとなった「マイ・エヴァ・チェンジング・ムーズ」は、シングルとは別バージョンでアルバムに収録された。軽快なアレンジのシングル・バージョンとはまた違った深い味わいがあって、わたしはこっちの方が好きだ。
(Goro)
コメント
とうとうコイツが来ましたか(笑)。
ここのところ精力的に80’sを紹介していらっしゃるので、そろそろかな?と思っておりましたよ。
ウェラー師匠に関しては、僕は実はこっちから入ったので、もう大好物のアルバムです。
当時、ビートルズ狂の従兄がアメリカ旅行から戻って、あちらで買ってきたマイ・エヴァ・チェンジング・ムーズの12inchシングルを聴かせてくれたのが始まり。PVも視聴して、もうカッコイイのなんの。それ以来のウェラー狂です。
カフェ・ブリュはCDしかなかったので、先日中古でアナログを買い足したところ。
売れたのはアワ・フェイバリット・ショップでしょうが、キラキラととっちらかっているコッチの方が断然好きですね。
Goroさん、タイムリーな投稿ありがとうございます!!
アナログ盤を入手したんですか、いいですね。
ジャケットも飾りたくなるぐらいカッコいいし、音的にもアナログの方が合いそうなサウンドですしね。
まだまだ80年代の名盤が続きますので、ぜひお付き合いください。