あの時代の匂いと熱気の真空パック 〜スープ・ドラゴンズ『ホットワイアード』(1991)【最強ロック名盤500】#336

Hotwired

⭐️⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#336
The Soup Dragons
“Hotwired” (1991)

あらためて眺めてみると、こんなしょうもないジャケットのCDをよく買ったものだと思う。しかもその当時はまだ聴いたこともない、わけのわからないバンドの。よく鼻が利く当時の自分を褒めてやりたい。

スープ・ドラゴンズは1986年にデビューした、英スコットランド出身のバンドだ。

1990年にローリング・ストーンズの「アイム・フリー」を、マッドチェスター風の「ロックとハウスの融合」みたいな感じでカバーして全英5位のヒットとなった、世間の認識では限りなく一発屋に近いバンドである。

そのヒットに牽引されて2ndアルバム『ラブゴッド』も全英7位まで上昇したが、本作はその2年後にリリースされた3rdアルバムである。こちらは熱しやすく冷めやすい英国人リスナーの気質を反映してか、全英74位と全然売れなかった。

【オリジナルCD収録曲】

1 Pleasure
2 Divine Thing
3 Running Wild
4 Getting Down
5 Forever Yesterday
6 No More Understanding
7 Dream-On (Solid Gone)
8 Everlasting
9 Absolute Heaven
10 Everything
11 Sweet Layabout
12 Mindless

ヒットした前作は当時流行のマッドチェスター風の楽曲が目立ったが、本作はダンス・ビートは残しつつ、パワフルなギターを前面に出すなどロックンロール色が濃くなり、プライマル・スクリーム風だったり、アメリカのオルタナ風だったりと、今回も節操なく流行を取り入れ、あの時代の空気の匂いと熱気を真空パックしたような作品になっている。

そんな感じなのであまり熱心に語られるようなバンドではないのかもしれないけれども、わたしは堂々と推そう。シリアスなものでもないし、何か深い意味が隠されているわけでもないけれども、こんな軽~いノリがいつ聴いても楽しい。意外とこういうのが古典的なロックンロールの姿だったのかもしれない、と思ったりもする。

CDを聴き始めて、2分を過ぎる頃にはすっかり気に入って、3分を過ぎる頃には一緒に口ずさめる。チャック・ベリーやビーチ・ボーイズの音楽だってみんなそんなふうに好きになったに違いないのだ。

耳に残るメロディや、カッコいいギターのフレーズや、アレンジのひと工夫が至る所にあり、アルバムは最後までまったく飽きずに聴ける。

今回調べていて初めて知ったのだけれども、フロントマンでバンドのソングライターでもあるショーン・ディクソンはわたしと同い年だった。なんとなく彼の書くメロディーには、同年代ならではのツボを刺激するようなところがあるのかもしれないなと思う。

↓ アルバムのオープニングを飾る「Pleasure」。ハイ、もう楽しい。

↓ 全米トップ40に入った唯一のシングル「Divine Thing」(全米35位)。

(Goro)

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