The Rolling Stones
Paint It Black (1966)
それまではブルース/R&Bとチャック・ベリー型ロックンロールというマニアック路線で来ていたストーンズが、前年の「サティスファクション」で世界的なブレイクを果たし、そしてさらにこの曲の全英1位、全米1位の大ヒットで、一気に音楽性がポップな方向にも広がりを見せた印象だ。
インド風なのか中近東風なのかよくわからないけれどもエキゾチックな曲調と謎めいた歌詞、インドの楽器シタールが使われているのが大きな特徴だ。
なんで急にインド? と思うかもしれないが、当時はLSD体験やヒッピー思想からの延長で、超越瞑想だの神秘主義だの、インドの哲学にカブれるのがミュージシャンたちの間で流行ったのである。
「だの」なんて言い方は失礼だけれども、われわれ日本人は瞑想とか神秘主義とか言われるとどうしても胡散臭い宗教団体を思い浮かべてしまうのでいけない。
インド人導師のマハリシを崇拝し、シタール奏者のラヴィ・シャンカールに弾き方を習いにインドまで行ったジョージ・ハリスンがそのインドかぶれの筆頭だが、その後ビートルズはあらためて全員でインドまで瞑想をしに行ったし、ミック・ジャガーもマハリシに面会している。ピート・タウンゼントはインドの霊的指導者メヘル・ババを崇拝していた。
この曲にはインド哲学はまったく関係ないが、しかしそんな流行を巧みに取り入れて、インド風サイケ味をたっぷりふりかけながらキャッチーなロックに仕上げたのはたいしたものだと思う。がっつりスパイシーな本格インドカレーではなくて、いちおうエッセンスは残してあるものの日本人向けに大幅アレンジした、バーモントカレーのようなものだ。
シタールを弾いているのはブライアン・ジョーンズだ。彼はどんな楽器でもあっという間にマスターする天才として知られたが、このときはジョージ・ハリスンに弾き方を教わると、ものの数分で弾けるようになったという。
これまでの曲とは一味も二味も違っていながら、ちゃんとストーンズらしさもあり、バンドとして一気に進化した感じだ。ジャガー&リチャーズの開花し始めたポップセンスと、ブライアン・ジョーンズの天賦の才能が、うまく噛み合った傑作と言えるだろう。
スタンリー・キューブリック監督の映画『フルメタル・ジャケット』のエンディングに使用されていたのも懐かしいな。
(Goro)
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