The Kinks
Waterloo Sunset (1967)
いかにもレイ・デイヴィスらしい、独創的で、ユーモアがあって、美しいメロディの、イギリスらしい完璧な曲だ。
前年の大ヒットシングル「サニー・アフタヌーン」と並ぶキンクスの最高傑作と言われる楽曲で、全英11位のヒットとなった。
レイ・デイヴィスなんて言ってもわれわれより下の世代はほとんど知らないのかもしれないけれども、キンクスのフロントマンであることはもちろん、ロック史上の最も優れたソングライターのひとりとして彼の名前が忘れ去られることなどあってはならない。
レノン&マッカートニーやジャガー&リチャーズに匹敵する、好みによってはそれ以上の楽曲をいくつも書いたし、なにしろレイ・デイヴィスはたったひとりで書いているのだ。
「ウォータールー・サンセット」はそのレイ・デイヴィスのソングライティングの才能を、瞬殺で納得させることができるような名曲だ。
ロンドンのど真ん中、夕陽に包まれたウォータールー駅とテムズ川を毎日窓から見下ろしている孤独な男性が、その情景を語っている歌だ。
タクシーのライトが光り輝き、1日に何万人もの人々が出入りする駅で、若い男女が待ち合わせをし、一緒にテムズ川に架かる橋を渡っていく。少し涼しくなった夕刻にそんな情景を眺めていると、天国にいるような気分になる、と歌う。
レイ・デイヴィスはこの曲を「商業的に成功させることと自分が書きたい物語的な作風を上手く調和させることができた。プロとしての重要な一里塚になった」と語っている。
わたしが一方で気になるのは、窓から外を眺めているだけのその孤独な男だ。彼は外に出かけていくことには興味はなく、ずっと部屋から外を見ているだけで満足なのだ。
今で言う「ひきこもり」なのだろうか。
純粋でありながら、どこか深く傷ついた心を持っているようなこの男にはいったいなにがあったんだろう、なんてついつい考えてしまう。
(Goro)