どうも、《ロックの快楽》の執筆者、若い頃にパンクにハマって、パンクの精神で生きていこうと決意して失敗した、ゴローです。
最初わたしはジャムをパンク・バンドと思って聴いていました。まだ「モッズ」という概念を知らなかったので。
まあパンクでもモッズでもどちらでもいいのですが、ただしジャムは、ラモーンズのようなデビューから解散まで永久不変のパンクロック・バンドじゃなくて、アルバムを出すたびに音楽性を変化させ、幅を広げていくという、ビートルズ・タイプの進化系バンドでした。
1977年のファーストと1982年のラスト・アルバムは、たった5年しか経っていないにもかかわらず、同じバンドとは思えないほど音楽性が違います。ファーストはそれこそパンク・ロックみたいな、シンプルで疾走感のある楽曲が多いですが、ラストの『ギフト』はまるでR&Bやファンクみたいな音楽です。
今回、あらためてザ・ジャムの全アルバム・シングルを聴き直しました。
もう30年以上も前から聴いているので、ぶっちゃけ飽きてもいますが、それでも、今聴いてもやっぱりいいなあと思えるものを厳選して、ランキングにしてみました。
以下は、わたくしゴローが愛するザ・ジャムの名曲のベストテンです。
Going Underground
シングルのみで発表され、ジャムにとって初の全英1位に輝いたヒット曲。
「この社会はくだらないものしかないから、おれはアンダーグラウンドで生きるんだ」と歌う歌だ。
わたしも十代のときにそう思って実践した。「ああ、君もわたしと同じ失敗をするタイプだな」と共感しながら聴いている。
後半にテンションをさらに上げて畳みかけていくようなスピード感がカッコイイ。
Town Called Malice
人気絶頂で解散してしまったジャムの最後のアルバム『ザ・ギフト』は初の全英1位を獲得したアルバムとなり、この曲もシングルとして1位に輝いた。
古き良きモータウン・ポップスを思わせるような曲調がキャッチーでクールな曲だ。
Precious
「悪意という名の街」と両A面シングルとして発表され、全英1位を獲得。
ベースラインが超絶カッコイイ、完全にファンクへとジャンプした楽曲だ。
アレンジも素晴らしい。ポール・ウェラーのひとつの到達点だったと思う。
Down in the Tube Station at Midnight
1978年発表の3rdアルバム『オール・モッド・コンズ』のラストを飾る曲で、シングル・カットもされた(全英15位)。
歌詞は、家に帰ろうとする若者が地下鉄の構内で極右の連中に襲われ、撲殺されるという衝撃的な内容だ。パンクやモッズの域を明らかに超えた、新たなブリティッシュ・ロックの誕生のようだった。
これを書いたポール・ウェラーは当時20歳。「恐るべき子供」である。
Start!
5枚目のアルバム『サウンド・アフェクツ』からのシングルで、全英1位の大ヒットとなった。
鶏の首を絞めてるみたいなギターが特徴的でカッコいいこの「スタート」は、ビートルズの「タックスマン」にそっくりとも言われるが、わたしには圧倒的にこっちのほうがカッコ良く聴こえる。
‘A’ Bomb in Wardour Street
名盤『オール・モッド・コンズ』収録曲。
このアルバムでジャムは一気に成長した。
一時的な流行のパンク・ロック・バンドとして消えていったバンドが多い中、クラッシュとジャムだけはアルバムごとに大きく成長を遂げることで、新たなスタイルのブリティッシュ・ビート・バンドとして生き残ったのだ。
いかにもジャムらしい、キレがよくてカッコいい曲だ。
Smithers-Jones
4枚目のアルバム『セッティング・サンズ』の中で、この時期のジャムの成長を物語るようなトラックだ。
ポール・ウェラーではなく、ベーシストのブルース・フォクストンの書いた一世一代の名曲であり、バックの演奏は弦楽四重奏のみという大胆な試みをしている。
歌詞の内容も、サラリーマンとして平凡ではあるけれども幸せに暮らすジョーンズ氏が、ある日なんの前触れもなく会社をクビになるという、サラリーマンの悲哀を描いた歌だ。
The Eton Rifles
名盤『セッティング・サンズ』からの先行シングルとして、全英3位の大ヒット。ジャム初のトップ10ヒットだった。
歌詞は、名門校の生徒と公立校の生徒の抗争が勃発し、イートン校のライフル部というなんだかおっかないのが出てくるという話のようだけど、イギリスの学生文化なんて知らないので、正直よくわからない。
でも、つんのめるようなスピード感とキャッチーなメロディはいかにもジャムらしい。
That’s Entertainment
『サウンド・アフェクツ』からのシングルで、全英21位。
アコギ2本のみでの演奏という、ジャムとしては異色の曲だが、たぶん当時よりも現在のほうが評価が高く、ジャムの代表曲として知られている。
ポール・ウェラーが「10分で出来た」というほどシンプルな曲だけれど、シンプルだからこその親しみやすさと深い味わい、永遠に色褪せない魅力がある。
In The City
ザ・ジャムのデビュー・シングル。
ポール・ウェラーがリスペクトするザ・フーの「マイ・ジェネレーション」のような、若者賛歌だ。
この街で輝いて見えるのは25才以下のやつらだけだ
あんたら大人はおれたちをクソだと思ってるだろ
おれはあんたらに言いたいことが山ほどあるんだ
青臭いかもしれないけど、おれは言ってみたい、叫びたいんだ
(written by Paul Weller)
ジャムには当時のパンク・バンドのようなチンピラ感はなく、見た目もスタイリッシュでカッコいいし、曲もムダなくキレのいい、スピード感あふれる完璧なカッコ良さだ。
イントロの、ギターで始まり、ベースが入って、ドラムが突進してくるところなんて、世界一興奮する瞬間のひとつだ。
以上、《ザ・ジャム【名曲ベストテン】でした。
ジャムのアルバムを初めて聴くなら、シングルを集めた『SNAP!』がお薦めだ。
最初に聴くべきジャムの名曲をすべて網羅している。
(Goro)