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The Jam
“All Mod Cons” (1978)
1stアルバムはパンク・ムーヴメントの真っ只中だったこともあり、パンクの影響を受けたモッズ少年の若々しい情熱と勢いで乗り切った感じだったが、2nd『ザ・モダン・ワールド』では早くも失速し、楽曲はどれもこれも印象に残らなかったし、サウンドも未整理で聴きづらかったものだ。
そんな崖っぷちに立ったジャムの、起死回生の傑作が3rdアルバムとなった本作である。
何よりもポール・ウェラーのソングライティングが飛躍的に成長し、曲ごとのスタイルが広がり、メロディも洗練され、強い印象を残すものが多くなった。
サウンドも整理されて聴きやすく、パンクとは一線を画す、ジャムとして独自の音楽スタイルを確立した、彼らの本当のスタートとも言える記念碑的な作品となった。
その音楽スタイルが60年代のザ・フーやキンクスといったモッズ文化の大先輩たちを手本にしたものであることは、本作に収録されたキンクスのカバー「デイヴィッド・ワッツ」に象徴されている。偉大な先輩への敬意と憧れを感じる、シャキッとした元気のいいカバーだ。
本作は1978年11月にリリースされ、全英6位と、ジャムにとって初のトップ10入りを果たし、商業的にも成功した。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 オール・モッド・コンズ
2 トゥ・ビー・サムワン
3 ミスター・クリーン
4 デイヴィッド・ワッツ
5 イングリッシュ・ローズ
6 イン・ザ・クラウド
SIDE B
1 ビリー・ハント
2 イッツ・トゥ・バッド
3 フライ
4 ザ・プレイス・アイ・ラヴ
5 バクダンさわぎ
6 チューブ・ステイション
B6「チューブ・ステイション」は全英15位まで上昇し、ジャムにとってそれまでで最も売れたシングルとなった。
若者が終電に乗るために、深夜のロンドンの地下鉄の駅で切符を買おうとしていると、右翼の集団に襲われ、暴行を受けるという内容の歌詞だ。暴力、孤独、都会の荒廃した冷たさを、緊迫感たっぷりに描いている。ポール・ウェラーのソングライターとしての才能が一気に開花した名曲と言えるだろう。
他にも、社会の偽善を辛辣に歌ったA3「ミスター・クリーン」やアコースティック・ギターを使った抒情的なA5「イングリッシュ・ローズ」、テンションがアガるB5「バクダンさわぎ」など、強い印象を残す佳曲がズラリと並ぶ。ザ・ジャムは前作の失敗からたったの1年で、仔犬が成犬になるぐらいの勢いで成長を遂げたのである。
そのうえさらに驚くべきことには、このときポール・ウェラーは、たったの二十歳なのである。
↓ 全英15位まで上昇した「チューブ・ステイション」。ポール・ウェラーの才能が開花した名曲。
↓ キンクスのカバー「デヴィッド・ワッツ」。オリジナルへのリスペクトが感じられるシャキッとした演奏だ。
(Goro)
コメント
ハタチでこんな曲群を書いちゃうって一体どんな才能だよ!って思わせるアルバムですね。
僕は年齢的に80年代のスタイルカウンシルから入っているので、ここにたどり着いたのは20代の中盤でした。その分衝撃度は低かったけれど、ソングライティングの妙みたいなものにはすごく感心してしまいました。
さて、恒例の観た会ったシリーズですが、ロンドン・カムデンタウンで古着を探していた時、棚をゴソゴソあさっている途中、ふと顔をあげたら対面であさっていたのがポール・ウェラーだった!ということがありました。大概の場合緊張しないのですが、個人的な(勝手に)師匠筋なものですからビックリして声をかけられなかったことが悔やまれる。1990年でしたので、ウェラー師匠のスランプ期にあたることから鑑みるに、きっとヒマだったんだろうナア…。
二十歳でここまでの完成度のアルバムを作るってことは驚異的だけれども、前作からの急成長を思うと、きっとずいぶん苦心したんだろうなとは思いますね。
ポール・ウェラー師匠にも会ってしまいましたか!
師匠も古着とか買うんですね。60年代仕様のモッズスーツでも探してたんでしょうか(笑)
そりゃ緊張すると思います。
なんか神経質そうなイメージですしね(笑)