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The Beatles
“Abbey Road” (1969)
やはり60年代は、ビートルズの時代だったのだな、とあらためて思う。
ブリティッシュ・ビートの基本型を創造して60年代ロックの扉を開き、ロックシーンを牽引し、ポップ・ソングの枠を超えて実験的なチャレンジを繰り返してロックの尽きることのない可能性を示していった。
そしてビートルズが芸術的にも商業的にも成功を収め、王道を極めたことで、アンチテーゼや対極のスタイルもまた生まれ、それによってさらにロックは賑わいを見せ、広がりと深度を増していった。
その60年代ロックの終焉を飾り、「ビートルズの時代」に自ら幕をおろしたのが1969年9月にリリースされた本作である。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 カム・トゥゲザー
2 サムシング
3 マックスウェルズ・シルヴァー・ハンマー
4 オー!ダーリン
5 オクトパス・ガーデン
6 アイ・ウォント・ユー
SIDE B
1 ヒア・カムズ・ザ・サン
2 ビコーズ
3 ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ユア・マネー
4 サン・キング
5 ミーン・ミスター・マスタード
6 ポリシーン・パン
7 シー・ケイム・イン・スルー・ザ・バスルーム・ウィンドー
8 ゴールデン・スランバー
9 キャリー・ザット・ウェイト
10 ジ・エンド
11 ハー・マジェスティ
A面はその独創性を4人が競うように、ジョンの「カム・トゥゲザー」に始まり、ジョージのこれまでで最高の曲であるA2、そしてリンゴも最高傑作であるA5を披露する。そしてポールはB3やB8でいかにも彼らしい洒落たメロディを奏でる。
良く言えばそれぞれの個性が花開いた最強のビートルズとも言えるし、悪く言えばまるで今後のソロ活動を念頭に置いて競い合っているアルバムのようでもある。
B8からB10にかけての大団円のようなクライマックスは、ビートルズの最後を飾る感動的なフィナーレにも聴こえる時もあれば、なんだか白々しくもの悲しいショーの終幕に聴こえるときもある。
正直、このアルバムはそんな複雑な感情を掻き立てる、いろいろなことに思いを馳せるような作品だ。
傑作には違いないが、ビートルズの最大の問題作でもあると思う。
↓ ジョージの作品が初のシングルA面となった「サムシング」。彼の最高傑作であり、ジョン・レノンも後に「『アビイ・ロード』で一番の曲」と評している。
↓ こちらはリンゴの最高傑作「オクトパス・ガーデン」。わたしにとって本作の中では一番であり、ビートルズの全楽曲中でも最も好きな曲のひとつだ。
(Goro)