新しい歴史の始まり 〜ザ・ビートルズ『プリーズ・プリーズ・ミー』(1963)【最強ロック名盤500】#76

Please Please Me (Remastered)

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【最強ロック名盤500】#76
The Beatles
“Please Please Me” (1963)

1955年にアメリカで誕生し、若者たちを熱狂させた〈ロックンロール〉は、1960年までには一掃された。

エルヴィスの徴兵でその勢いは削がれ、リトル・リチャードは聖職に就くために引退を宣言し、ジェリー・リー・ルイスはスキャンダルによって失速した。バディ・ホリー、リッチー・ヴァレンス、ビッグ・ボッパーが飛行機事故で夭折し、チャック・ベリーは少女に売春を強要させた疑いで逮捕されて懲役に服し、ジーン・ヴィンセントは自動車事故で重傷を負い、同乗していたエディ・コクランは即死だった。

偶然なのだろうが、まるで何か見えざる力が働いて、〈ロックンロール〉という、若者を狂わせる病原菌のように忌み嫌われた音楽は、社会から駆逐されたかのように思えるほどだった。

しかしはロックンロールは死に絶えてはいなかった。
ロックンロールは大西洋を渡り、1963年にイギリスで復活の産声をあげた。
それが本作である。
しかも変異を遂げてその中毒性はさらに強力になり、世界中の若者を熱狂させた。

本作は1963年3月にリリースされた、ビートルズの1stアルバムである。

前年の10月に「ラヴ・ミー・ドゥ/P.S.アイ・ラヴ・ユー」のシングルでデビューし全英17位と好発進し、2枚目のシングル「プリーズ・プリーズ・ミー/アスク・ミー・ホワイ」が全英2位の大ヒットとなると、その勢いで本作のレコーディングに取り掛かった。

シングルとして既発の4曲以外の10曲は、たった1日で録音された。
そのうちの6曲は当時のライヴでも演奏していたカバー曲で、ライヴの感覚を残した勢いのあるアルバムに仕上がった。ビートルズのアルバムの中では最もシンプルなロックンロール・アルバムと言えるだろう。カッコ内はカバー元のアーティスト。

SIDE A

1 アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア
2 ミズリー
3 アンナ (アーサー・アレキサンダー)
4 チェインズ (クッキーズ)
5 ボーイズ (シュレルズ)
6 アスク・ミー・ホワイ
7 プリーズ・プリーズ・ミー

SIDE B

1 ラヴ・ミー・ドゥ
2 P.S. アイ・ラヴ・ユー
3 ベイビー・イッツ・ユー (シュレルズ)
4 ドゥ・ユー・ウォント・トゥ・ノウ・ア・シークレット
5 蜜の味 (ハーブ・アルバート)
6 ゼアズ・ア・プレイス
7 ツイスト・アンド・シャウト (トップ・ノーツ)

本アルバムは30週という長期にわたって全英1位の座に君臨し、その記録を止めたのも彼らの2ndアルバム『ウィズ・ザ・ビートルズ』であった。1963年、音楽の歴史が変わった瞬間だった。

日本では本アルバムは3年後の1966年に、来日記念盤として『ステレオ!これがビートルズ Vol.1』というタイトルでリリースされた。収録曲は同じだが、なぜか曲順を変えてある。ジャケットも違う。正直、なぜわざわざそんな手間をかけたのかわからない。

ビートルズ / ステレオ!これがビートルズ VOL.1(中古レコード) - BORDERLINE RECORDS

オリジナルのタイトル、ジャケット、曲順で日本でようやく発売されたのがもうビートルズもとっくに解散して久しい1976年だったというのが、今回この記事のために調べていて、一番驚いたことである。

ちなみにオリジナル・ジャケットに写っている建物は、英国のEMI本社である。
高所から見下ろしてニヤついているビートルズの写真に震えが止まらなかったのはきっと、1年前に彼らをオーディションで落としたデッカレコードの選考担当者だったろうなあ。


↓ 1962年10月にリリースされたデビュー・シングル「ラヴ・ミー・ドゥ」。全英17位。

Love Me Do (Remastered 2009)

↓ 1963年1月にリリースされ、全英2位の大ヒットとなった「プリーズ・プリーズ・ミー」。

Please Please Me (Remastered 2009)

(Goro)