テレヴィジョン『マーキー・ムーン』(1977)【最強ロック名盤500】#234

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#234
Television
“Marquee Moon” (1977)

テレヴィジョンもまたN.Y.パンクの代表に挙げられるバンドだけれども、彼らの音楽性はラモーンズやハートブレイカーズのようなシンプルな原点回帰のロックンロールとはまったく違う。

ダークな異世界から聴こえてくる、冷たい狂気と仄かなエロスの匂いがする、突然変異的でありながら完成度の高い音楽だ。どちらかと言うとパティ・スミスと似た傾向の、文学的でアート系であり、ドアーズやヴェルヴェット・アンダーグラウンドを想起させる。

初期パンクの時代なのに、すでに雰囲気はどことなく80年代のニュー・ウェイヴみたいでもある。

フロントマンのトム・ヴァーレインが、「ドアーズが所属したエレクトラレコードと契約したい」と希望してそのエレクトラと契約し、彼らの1stアルバムとして1977年2月にリリースされたのが本作だ。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 シー・ノー・イーヴル
2 ヴィーナス
3 フリクション
4 マーキー・ムーン

SIDE B

1 エレヴェイション
2 ガイディング・ライト
3 プルーヴ・イット
4 引き裂かれたカーテン

テレヴィジョンの代表曲と言えるA4「マーキー・ムーン」は、10分40秒という大曲だ。ジャム・セッションみたいな長い曲はわたしは苦手なのだけど、この衝撃的とも言うべき名曲は最後までずっと聴いていられる。ただし、朝からは聴けない。やっぱり夜じゃないと。

他にはA2「ヴィーナス」、A3「フリクション」、B1「エレヴェイション」なんかが特に好きだったけれども、ちょっとなかなか無いほどの、とにかく名曲揃いである。

失礼ながら文学的な歌詞というものにはわたしはあまり興味が無いけれども、美しいとも気持ち悪いとも言える引きつったようなヴォーカル、メタリックな響きで熱いとも冷たいとも言える壮絶なギター、そしてパンクの域を超えている楽曲の完成度の高さがなによりも凄い。

硬質な音が美しく、楽曲はどれも細かいところまでごまかしもやっつけも無く、しっかり設計されていると感じる。静と動のメリハリがあり、切れ味鋭い斬新なサウンドと、口づさみたくなる豊かなメロディーの併存が奇跡のようだ。

単にN.Y.パンクの名盤というだけにとどまらず、その後のロックの流れを変えたと言っても過言ではない、ロック史に残る大名盤だ。

テレヴィジョンは1973年にニューヨークで結成された。
トム・ヴァーレインがリード・ヴォーカルとリード・ギター、ソングライターという三役をこなし、結成時のベーシストはリチャード・ヘルだった。

ちなみに当時のトム・ヴァーレインは、パティ・スミスと恋愛関係にあった。

余談だが、パティ・スミスの1st『ホーセズ』とテレヴィジョンの1st『マーキー・ムーン』は、どちらもインパクトの強いジャケットだけれども、この両方の写真を撮ったのが、パティ・スミスのルームメイトでもあったカメラマン、ロバート・メイプルソープである。

↓ シングル・カットされた「ヴィーナス」。

↓ 10分を超える圧倒的な名曲「マーキー・ムーン」。

(Goro)

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